研究課題/領域番号 |
15J02395
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
堀口 直樹 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
キーワード | 高速微小液滴 / 液滴数密度 / 高速度カメラ / 短時間パルス光源 / 界面追跡方 / 三次元数値解析 |
研究実績の概要 |
本研究は,原子力発電所のフィルター付ベント時のための機器の主要構成要素である,ベンチ ュリースクラバー(VS)の流動を,実験的,数値解析的に把握し,流動挙動モデル式の開発を含む作動特性評価手法を構築する.(1)実験的・数値的流動データの取得:VS内部で発生する噴霧流中の数百m/s の高速度かつマイクロスケールな液滴に対し,顕微鏡レベルでの可視化観察を実施しその径分布と速度を同時に計測する.また高速微小液滴を含む流動場における気液界面積の定量評価のため,界面の保存性が高い界面追跡法を用いた解析手法に対し,実験データとの比較による現象の再現性を検証した上で同手法を用いて詳細なデータを取得する.(2)流動機構の解明および作動特性評価手法の構築:(1)で取得した実験と数値解析データの相互補完により,VS内部流動の物理メカニズムを詳細に把握することで流動挙動モデル式を開発し,作動特性評価手法を構築する. 平成27年度は実験的・数値的データの取得のため,それぞれの計測・解析手法の構築とデータの取得を実施した.実験では,噴霧流を流れる数十m/sの高速かつマイクロスケールの液滴の可視化を達成し,画像処理を用いて液滴径を評価した.既存式との比較によりフィルター付ベントのためのVSにおいてもせん断力が支配的要因となって液滴が発生している可能性を確認した.また,高い液滴数密度でも液滴径評価に実績のあるレーザー干渉縞法を導入した.数値解析では,界面追跡法を用いた三次元数値解析を導入し,VS内の流れの解析を実施した.実験結果との比較により数値解析の再現性を定性的に確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[実験的なデータの取得]:代表者らは,ベンチュリースクラバー内部では気相流量の増加に伴い,液の流入直後の他,その下流で液膜の剥離に伴い一点集中的に発生する部分が現れることを明らかにした[1].一つ目の液滴発生に関しては多くの研究がなされているが,二つ目においてはそもそも報告がなく,原子力発電所の過酷事故時でのVSの使用を想定する上で,この流動機構や作動特性を明らかにすることが重要であり,かつこのためには発生箇所毎における液滴径の把握が重要である.しかし高い液滴数密度,数百m/s の高速度かつマイクロスケールの液滴を可視化・計測する必要があるが,そのような手法はこれまでにない.よって,以下のような可視化方法を検討し,必要な装置および光学系の製作し,実験を行いその適用性を確認した.また,一部の結果については既存式と比較評価し,既存モデルや式の有効範囲や修正すべき点について検討した.1)長作動顕微鏡レンズ,高速度カメラおよび短時間パルス光源を用いた,高速度かつマイクロスケールな液滴の可視化.2)レーザー干渉画像法[2]を用いた,液滴同士が重なるような数密度での液滴の可視化. [数値的なデータの取得]:上述の実験に関する項目で述べたような流れ場は,その圧力や流速など,流動機構や作動特性を検討する上で必要な物理量の把握が難しい.そこで界面追跡法を用いた三次元解析手法を用いてシミュレーションし,詳細な流れ場の情報を取得するべく,その解析体系の構築とシミュレーションの実施を行い,解析手法の適用性を確認した.
|
今後の研究の推進方策 |
実験に関しては,構築した二つの可視化手法を組み合わせて,VS内の主な液滴発生源近傍における高い数密度で流れる高速度微小液滴の撮影を実施し,発生源毎の液滴径を評価する.数値解析に関しては,格子数を増やし解像度を上げた数値解析により詳細な流れ場の情報を得る.これらの結果を踏まえて流動機構や作動特性について検討していき,必要に応じたモデルや評価式の提案を行っていく.
|