研究課題/領域番号 |
15J02413
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
丹羽 智美 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
キーワード | タンパク質 |
研究実績の概要 |
高等植物の集光アンテナタンパク質であるLHC-IIの結晶化と回折実験をおこなった。昨年度に測定したデータには回折データの大きな異方性や空間群の対称性の低さ、分解能の低さなどの問題点が見られた。このうち、回折強度の大きな異方性は電子密度の質に大きな影響を与えるために、できるだけ克服する必要がある。そこで、精製条件や結晶化条件、凍結条件について検討をおこなった。その結果、あらかじめ抗凍結剤を結晶化の際に加えておき凍結することで解決することができた。最高で2.8オングストロームの回折点が観測でき、3オングストローム分解能のデータセットを得ることができた。この結晶中ではLHC-II分子が二次元膜を形成し、さらにその膜が積層した構造が観察された。これはチラコイド膜でも見られる集合形態に類似しているために、励起エネルギー移動の研究への利用に適していると考えられる。また、実際に電子密度の質も大幅に向上していた。電子密度中では、ポリペプチドの側鎖やクロロフィルのフィトール基なども明瞭に観察できた。 一方、新規な研究対象の検討をおこなうために、クロロフィルと同様にポルフィリン環化合物(ヘム)を結合している膜タンパク質であるヘムA合成酵素の構造解析をおこなった。X線回折実験と重原子法による位相決定の結果、全ての膜貫通ヘリックスを観察することができた。また、一分子あたり1個のヘムが結合していることも確認することが出来た。この構造は新規なものであり、解析手法や構造的特徴などの成果を日本結晶学会年会にて報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
さまざまな作製条件の結晶から回折データを収集したが、その中には回折強度の異方性がなく明瞭な電子密度を与えるものも見られた。また、新規な研究対象の検討のために、クロロフィルと類似構造を持つヘムを含むタンパク質(ヘムA合成酵素)についても結晶化と構造決定をおこなうことができた。このように、計画とは一部異なるものの総合的には期待通りに研究が進展し、次年度における研究が期待できる状況である。しかしながら、回折実験ではこの課題をおこなうために必要なだけの分解能のデータセットを得ることはできなかった。これは結晶格子によるものだと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
高等植物由来集光アンテナタンパク質に関して、より良質な結晶を得るための結晶化条件の探索を続ける。これまでに試していた可溶化法による結晶化だけではなく、膜タンパク質の結晶化法として有効であるLCP法、膜融合法を試みる。これにより、より密にタンパク質が詰まったような結晶の作成を目指す。
|