(1)新たな圧電アクチュエータを選定し,実験系に組み込んだ.構造物の大きさ,剛性と圧電アクチュエータの大きさの関係が,発電効率に大きく影響する事を示し,構造物に適した圧電アクチュエータの選定が重要であることを確かめた. (2)以前の計測方法ではパラメータの測定精度が低く,それを基に設計されるカルマンフィルタやLQRの性能を低下させていた.[マスの質量増減による固有振動数の変化を用いたマス質量測定]や「圧電素子のキャパシタンス増減による圧電係数の変化を用いた圧電キャパシタンス測定」の実験を提案,実行し,より高精度な物理パラメータを求めた.これにより,2自由度振動系に対する発電システムの制御がより正確かつ安定に行えるようになった. (3)昨年度使用していたルネサス社製のマイコン78K0Rを同社製RL78シリーズへと変更し,システムの内部消費を削減することで発電量の向上に努めた.マイコンを変更するにあたり,開発環境の整備,および書き込むプログラム文の整理を行い,さらなる開発・改良の基盤を作った. (4)昨年度までの発電システムでは構造物の限定された位置に圧電センサの貼付が必要であり,かつセンサからコントローラであるマイコンまでの配線が障害になる上にノイズ混入の原因となっていた.そこで,発電に用いている圧電トランスデューサの電圧を計測することで構造物の状態を推定できないかと考えた.この課題に対し,状態推定器としている線形カルマフィルタを拡張し,かつ複数を切り替え使用することで,非線形の圧電電圧波形からモード変位,モード速度,蓄積電荷の3つを推定する手法を提案した.本手法は,昨年度より我々が提案する「状態量のモード分離推定とモード状態量に基づく最適制御による効率的振動発電」の革新であり,圧電センサのないコンパクトな回路でありながら,従来の機能を実現するものである.
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