本年度は、前々年度・前年度に確立した手法により得られたall-αタンパク質のデザインの成否を確認した。また、手法の汎用性を検証するために、異なるトポロジーを持つ主鎖に対してもアミノ酸配列デザインを行った。 (1) 特定の構造について、デザインの成功が実験的に確認された:ある主鎖構造(H5_fold00と呼ぶ)についてのデザインアミノ酸配列について、ひきつづき実験的検証を進めた。結果、10デザイン配列のうち少なくとも1配列は、NMRにより目的の3次構造を取っていることが確認された。世界で初めて「規則的でない二次構造配置をもつall-αタンパク質」が人工的にデザインされた。これにより、今回開発した構造デザイン手法が有効であることが確認できた。加えて、さらに別の1配列については、X線構造解析により、二次構造配置はデザイン通りにもかかわらず、二分子間でドメインスワップが起きている、ということがわかった。これは想定外の結果であり、デザイン手法を改善すべく、溶液中での会合状態を実験的に検証している。 (2) さらに多数の構造・配列のデザインを進めた:今回開発された手法を適用し、ヘリックス6あるいは7本の構造についてデザインを行った。計算機上では良好な結果を得ており、これらについても実験的評価を行っている。 (3) 総括:本研究は、膜タンパク質の構造デザインを目指すはずだった。しかし、そもそもall-α構造のタンパク質を系統的に構造デザインする手法が存在しない、ということから予想外の方向に進展した。結果、多様なall-α構造をデザイン可能な手法を開発するに至り、all-αというクラスのタンパク質の構造空間を広く理解するという点で重要な知見が得られた。当初の計画よりも、より一般性の高い課題を解決することができたと考えている。
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