研究実績の概要 |
本研究では、TLR3アジュバントであるpoly(I:C)による樹状細胞 (DC)を介した細胞傷害性CD8+ T cell (CTL) 活性化の分子制御機構、およびそれに起因する抗腫瘍メカニズムの解明を目的とした。前年度までの研究により、腫瘍移植マウスにおいてpoly(I:C)による抗腫瘍効果を効果的に誘導するためには、転写因子Batf3により分化誘導されるCD8+ DCが重要であることが示された。そのため今年度においては、引き続きBatf3依存的CD8+ DCによる抗腫瘍免疫誘導メカニズムに着目し解析を進めた。 まず、Batf3依存的CD8+ DCにおける分子発現パターンおよび表現型の解析を行った。その結果、Batf3依存的DC8+ DCサブセットはXCR1-hi, CLEC9A+という分子発現パターンを示し、TLR3を高発現していることが確認された。また、このDCサブセットはpoly(I:C)刺激時に、非常に強いCTL誘導能およびIL-12産生能を発揮することが明らかとなった。このような表現型はヒトの体内に存在するCD141+ DCサブセットと一致するものであったため、Batf3依存的CD8+ DCはヒトCD141+ DCのカウンターパートであり、このサブセットがTLR3アジュバントによる腫瘍退縮を担う責任細胞であることが明らかになった。 また腫瘍を移植したBatf3欠損マウスでは、腫瘍内に浸潤しているCD8+ DCの数が非常に少なく、poly(I:C)治療を行った際の腫瘍組織からのケモカイン産生が誘導されなかった。その結果、腫瘍内へのCTL浸潤が起こらず腫瘍退縮が十分に誘導されないことが明らかとなった。 以上、本研究よりTLR3アジュバント療法における責任細胞の同定、およびその抗腫瘍メカニズムの一端が明らかとなった。
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