研究実績の概要 |
慢性的な寒冷刺激は褐色脂肪の活性化とUCP1 発現量の増加に加えて、褐色脂肪組織の過形成をもたらすことが知られている。この過形成は前駆細胞の分裂増殖と分化によると想定されているが、前駆細胞が褐色脂肪細胞へと分化するには4-5日の期間を要することから、急な寒冷刺激に対応するためには成熟褐色脂肪細胞の増殖が組織の増成に関わっている可能性がある。そこで、寒冷刺激により成熟褐色脂肪細胞の増殖が誘導されるか否かを明らかにするために以下の実験を行った。 ①.0, 1, 3, 5日間の寒冷環境で飼育したマウスから褐色脂肪組織を採取した。 ②.採取した組織の一部を用いて組織切片を作成し、増殖マーカーであるKi67の発現と細胞膜に発現する Proton-coupled monocarboxylate transporters-1(MCT1)の発現を免疫染色により解析し、褐色脂肪細胞の増殖がどの時期にどの程度起きているかを判定した。 ③.MCT1により個々に識別された細胞を褐色脂肪細胞とそれ以外の間質細胞に区別し、それぞれのKi67陽性細胞の割合を寒冷日数ごとに算出した。 上記の結果、Ki67陽性褐色脂肪細胞の割合は寒冷1日目からが有意に高くなっていることがわかり、寒冷5日目でも有意に高かった。一方、Ki67陽性間質細胞の割合は寒冷1日目から徐々に増加し、寒冷5日目で有意に高くなることがわかった。このことから、寒冷初期では分化した褐色脂肪細胞が増殖し急な寒冷刺激に対応しており、寒冷後期から前駆細胞や血管内皮細胞を含む間質細胞が増殖し組織の機能を高めていると考えられた。
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