研究課題/領域番号 |
15J02505
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
尾崎 拓 同志社大学, 心理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 防災 / 規範 / 説得 / 解釈レベル理論 |
研究実績の概要 |
個人による地震防災行動は、重要な社会的問題であると認識されているものの、実際には十分な水準の防災行動がとられているとはいいがたい。本研究は、個人的な防災行動であっても、社会からの影響 (記述的規範; 多数派の振る舞いに起因する規範) が防災行動を促進しうることに着目し、その影響過程について、実証的な検討を行ってきた。 社会からの影響は、常に一定の大きさをもつとは限らず、どのような場合に、どのような対象にとって有効であるか、という影響過程を明らかにすることは、有効な防災アピールの構築において重要であると考えられる。影響過程を明らかにするため、本研究では解釈レベル理論に基く検討を行った。 今年度は、4つの実験を実施し、そのうち1件の結果を国内学会で報告し、2件の結果を国内誌に投稿した。実験1では、地震防災行動についての社会からの影響が、解釈レベルによって異なる解釈を生じさせるか直接的な検討を行った。解釈レベルの効果は部分的にみられたものの、大学生を対象とした調査では、参加者の属性と防災行動の関連性が弱かった可能性があった。そこで、実験2および3では、大学生に身近な題材 (学習行動に対する説得メッセージ) をとりあげたうえで理論面の検証を行い、実験4では一般成人サンプルを対象とする、防災行動に関するインターネット調査を実施した。これらの検討では、解釈レベルが説得効果を調整するという仮説は一部支持され、社会からの影響を用いた説得アピールを行う場合における理論的な示唆が得られた。一方で、その効果は応用可能性を考慮した場合に、十分強いとはいえないことも明らかになった。これらの結果をふまえると、今後の研究では、解釈レベルが動機づけに及ぼす影響をモデルに組み込むことで、説得メッセージの影響過程を詳細に把握することができる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備的な実験から、実験対象者の再選定と、実験材料を再検討する必要が生じたものの、インターネット調査による一般成人対象者の確保と、適切な実験材料を考案し、計画通りの実験が実施できた。実験の結果は、仮説を完全に支持しているとはいえないものの、その過程で説得理論に関する理論的考察を提案することができた。主たる実験結果は原著論文として投稿済みである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においても、社会からの影響が、説得過程にどのように及んでいるか、という問題を、解釈レベル理論にもとづいて検討する。これまでの研究から、解釈レベルの影響が、社会からの影響の表象を変容するだけでなく、動機づけ (説得メッセージの処理の程度) にも影響を及ぼす可能性が示唆されている。そのため、影響過程をモデル化する際に、新たに動機づけの影響を考慮したモデルを考案し、検証する。
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