研究課題/領域番号 |
15J02516
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
太田 菜央 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | コミュニケーション / 求愛ディスプレイ / 鳴禽類 / 性淘汰 / 社会性 |
研究実績の概要 |
鳴禽類の求愛ディスプレイはこれまで歌(さえずり)による音声コミュニケーションについて多くの研究がなされてきたが,歌と同時に行われる身体運動(ダンス)がコミュニケーションにどのような機能を果たすのかはほとんど分かっていない. 昨年度は鳴禽類ルリガシラセイキチョウ(以下,セイキチョウ)の雌雄のダンス行動を定量化し,個体間・個体内変動に着目した研究を行った.セイキチョウは雌雄ともに,求愛時にうたいながらジャンプを繰り返すが,このジャンプの着地時に,パチンという明瞭な音を発する.このような音はブンチョウなどの近縁種のダンスでは発せられず,そもそもどのような仕組みで発せられているのかは全く知られていなかった.そこで,高速度カメラによるダンス行動の撮影行ったところ,人の目には1度ジャンプしただけのように見える行動の中に,高速度で3~5回足をバタバタと地面に叩き付ける運動(ステップ)が含まれることを発見した.このタップダンスに似た求愛行動は,音や振動を発することで視覚や聴覚,触覚など複数の感覚種を介したコミュニケーションに寄与していると考えられる. セイキチョウの求愛行動がどのような場面で,どのように機能しているのか調査するために求愛行動の個体内・個体間変動を調査した.その結果,ダンス行動に性差は見られず,雌雄で同じくらい複雑なダンスを行っていた.一方,歌っているときやパートナーの位置によってダンス行動に個体内変動が見られた.この結果は,自身やパートナーの状況に合わせて行動を調節し,振動や音など複数種類のシグナルを効果的に発していることを示唆する. 更に,ステップ回数と音の大きさの関係を調査したところ,ステップ回数が多いほど大きな音を出していることが判明した.このことは,ステップ行動が発声によらない求愛音を出すために進化してきたことを支持する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度は鳴禽類の求愛ディスプレイにおいてこれまで全く知られていなかった行動を発見するとともに,その定量解析を詳細に行った.それらの結果は既に国際誌において発表済みである.今年度参加したサマースクールや国際会議では多様な研究者や学生と議論する機会があり,今後の研究に役立つ示唆が多く得られた.またセイキチョウの求愛ダンスの音シグナルとしての機能を検討した研究では非常にクリアな結果が得られ,予想以上に早い段階で論文投稿に至ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
現在は,セイキチョウの求愛行動の社会的機能を明らかにするべく,様々な社会状況下で求愛行動にどのような変化が見られるが調査している.また,防音箱でのステップ音と歌の録音も行っており,このデータを用いて発声音(歌)と非発声音(ステップ)の統合性と,それが音シグナルとしてどのように機能しているのか調査していく予定である.
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