昨年度は,望みの巨大物質を内包させたGUV(巨大脂質二重膜リポソーム)を標的細胞と電気融合させることによってGUVから細胞へとマイクロメートルサイズの物質を導入する手法を確立した.本年度はこの結果を基に,細胞とGUVの数比率やGUV膜の組成を変化させることで,細胞への物質の導入効率がどのように影響するか調査し,導入効率の向上を図り,最適条件について検討した.また異なる細胞種を用いることで,本法による導入効率の細胞種依存性についても調査し,同じく細胞への導入可能物質についても調査した. 具体的には,細胞とマイクロサイズのビーズを内包したGUVの比率を調整して導入効率を評価した.その結果,細胞に対するGUVの割合が多いほど,物質の導入率が向上することが明らかになっ.また,GUV脂質膜の組成と細胞への物質導入率の影響について調査するため,脂質膜表面電荷の異なるGUV(正,中性,負)を用いて電気融合を行い,導入率を評価した.その結果,正電荷及び負電荷脂質膜を使用して融合した場合に導入率が格段に向上することが明らかになった.加えて,細胞自体のサイズと人工物導入率の関連について調査した結果,細胞側の直径が大きいほど導入率が向上し,導入可能なサイズの上限も増加するという結果が得られた.さらに,導入可能な物質を拡大するべく調査を行った.その結果,活性を保ったまま抽出し,生細胞へ導入するのが困難とされている細胞内小器官であるミトコンドリアを,本法を用いて活性を保ちつつ細胞内に導入できることが明らかになった. 以上,本年度の研究によって,本法における細胞サイズと導入可能物質との関連について従来不明であった新たな知見が得られたと共に,導入率をより向上させるパラメータが見出されたといえる.
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