研究課題
ミリ波サブミリ波におけるsub-mJy源の主な構成要素と予測されている、激動進化期(約50-100億年前)にある一般的な星形成銀河の星間物質の性質を調べた。赤方偏移(z)1.4(約90億年前)にあり、幅広い星質量範囲・金属量範囲をカバーするように選出された銀河20天体のALMAによる分子ガス(CO(J=5-4))のデータ解析を行った。11天体でCO輝線を検出することに成功し、検出できなかった銀河も含めてスタッキング解析を行った。分子ガス質量とその割合は同程度の星質量をもつ近傍銀河に比べ大きいことが分かった。星質量の増加とともに分子ガス質量は大きくなり、金属量との相関は見られなかった。一方、割合は星質量、金属量が大きくなるほど減少することが分かった。分子ガスの消費時間を調べたところ、星質量・金属量の増加とともに分子ガスを早く消費していることが分かった。この相関は近傍銀河と異なる結果となっており、今後z~0-1におけるガスの研究が重要である。またALMAで分子ガスと同時に取られたダストデータの解析も行った。星質量・金属量の増加とともにダスト質量は大きくなることが分かった。ガス・ダスト質量比は近傍銀河に比べ3-4倍大きいことが分かった。質量比の不定性は大きいが金属量依存性は近傍と同じ相関を示す傾向にあることが示唆された。以上の研究については査読論文として出版することができた。並行して、野辺山45m電波望遠鏡とハーシェル宇宙望遠鏡を用いてもガス・ダスト質量比を調べている。新たに4天体について解析を行い、3天体から分子ガス(CO(J=2-1))輝線を検出することができた。ハーシェルのデータからダスト質量を求め、算出したガス・ダスト質量比はALMAの結果を支持するものであった。この研究については現在論文投稿中である。
1: 当初の計画以上に進展している
ALMAによって得られたデータの処理・解析を非常に精力的に進め論文出版を行い、野辺山45電波望遠鏡のデータ解析も進め論文投稿を行った。またいくつかの国際研究会にも招待されるなど、数多くの研究会で発表を行った。本研究によって銀河の激動進化期の星間物質の基本的性質の理解が大きく進展したと考えられる。さらに次年度で解析を行うデータの取得も進めており、当初の計画以上に進展していると言える。
ALMAデータの解析を進め、激動進化期の一般的な星形成銀河における星間物質の性質解明とミリ波サブミリ波におけるsub-mJy源の可視・近赤外線でのフォロウアップ観測を目指す。これにより、sub-mJy源の正体が明らかになるだろう。また今年度の結果において近傍銀河との違いが見えてきており、z~1.4とz=0の間をきちんと調べる必要がある。この間の時代に銀河の星間物質はどのような性質を持っているのか、各時代で明らかにすることは銀河進化の解明につながるだろう。今後はまず、野辺山45m電波望遠鏡を用いてz=0.1-0.2の銀河をz~1.4の天体数と同程度(~20天体)観測し、どのような性質を示すのか明らかにしたい。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 6件、 招待講演 3件)
The Astrophysical Journal
巻: 819 ページ: 82 (18pp)
10.3847/0004-637X/819/1/82
巻: 810 ページ: 91 (8pp)
10.1088/0004-637X/810/2/91