本研究では、マリアナ諸島におけるアジア・太平洋戦争の記憶をめぐる様々な動きを現地の人々(チャモロやカロリニアン)の視点を軸にしながら、日米を含めた三者関係の分析・考察を目指してきた。 具体的には、マリアナ諸島(グアム及びサイパン)におけるLiberation Paradeや戦時中に同島で命を落とした人々への追悼・慰霊の諸行事をフィールドワークすることで、グアム‐北マリアナ諸島間における戦争の記憶の表象を比較分析することができた。 また、メリーランド州カレッジ・パークにあるNational Archives(Archives Ⅱ)での資料調査では、マリアナ諸島を含むミクロネシア地域における戦争の記憶の表象を考える上で、重要な要素の一つである米国立公園局のマスタープランの資料等を収集した。これにより、米国がマリアナ諸島でアジア・太平洋戦争の記憶をいかに扱ってきたかという点を分析するきっかけを手にすることができた。本研究の目的を踏まえてみても、非常に参考になりうる資料をレビューできたといえる。 これまでのフィールドワーク・資料収集の成果を基にして、2016年5月19日~21日までグアムにて開催された第22回Pacific History Association Conferenceにおいて、Entangled war memories in Guam: Aspects of “commemorative” and “memorial” eventsと題する研究報告を行った。さらに、2016年12月には、グアムにおけるアジア・太平洋戦争の「戦跡」についてまとめたものを新井隆「グアムにおける追悼・慰霊の空間―「想起の場」としての戦跡を考える」渡辺尚志編『アーカイブズの現在・未来・可能性を考える―歴史研究と歴史教育の現場から』法政大学出版局として、刊行するなどした。
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