研究課題/領域番号 |
15J02662
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
時實 恭平 名古屋大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | ミクログリア / GPR34 / GPR84 / ラミファイド / リン脂質 |
研究実績の概要 |
神経の生存再生、神経因性疼痛おけるミクログリアの関与および重要性が提唱されている。神経系においてミクログリアは最も多様なGPCRを有する細胞で、その機能の発揮には多くのGPCRが関与しており新たな創薬のターゲットとなる可能性が高い。そこで我々は神経損傷時にミクログリアにおいて発現の上昇するGPR34, GPR84に着目して解析を行った。GPR34のリガンドであるリン脂質をミクログリアに作用させたところ多数の突起を伸ばすいわゆるラミファイド型に形態が大きく変化した。該当年度はその形態変化に着目し、研究を遂行した。GPR34ノックアウトマウスを使用した実験によりその形態変化がGPR34を介さず新たな受容体非介在性の応答であることが明らかになった。さらにその形態変化を引き起こす事により、IL6, TNF-αを代表とするリポポリサッカライド刺激により誘導される炎症性サイトカインの発現を抑制することに成功した。現在、この脂質メディエーターによるミクログリアの形態変化のメカニズムについて、多面的に詳細な解析を進めている。また同時にミクログリアにおけるGPR84の機能解析も遂行中であり、走化性に関わることを示す結果が出ている。形態の変化と走化性はミクログリアの機能を考えるにあたり大変重要であり、いかにコントロールするかが疾患の治療に期待される。新たに見出された実績内容のメカニズムをさらに詳細に解析することでミクログリアの形態変化だけでなく神経生存再生および神経因性疼痛の解明に大きく切り込める可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミクログリアにおけるGPCRの解析をテーマとして実験計画を立て取り組んでいるが実験を進めるに当たり方向を修正する必要が出てきた。GPR34のリガンドであるリン脂質をミクログリアに作用させたところ大変興味深いことに突起を多数伸ばすいわゆるラミファイド型に形態が大きく変化した。このin vitroでの変化はin vivoのミクログリアの形態に近く、今までに報告がないユニークな形態を示した。当初この形態変化はGPR34を介するものだと予想されたが、GPR34ノックアウトマウスを用いた実験からGPR34非依存的に起こる事が分かった。そのリン脂質の受容体候補である他のGPCRも解析したが既知のどの候補にも依存しない形態変化であることが示された。しかし、この形態変化のメカニズムを解明することはミクログリアという細胞を理解するためにも必要であり、大変意義のあることだと考え、引き続きリン脂質による形態変化の解析を進めている。また同時にミクログリアにおけるGPR84の機能解析も遂行中であり、走化性に関わることを示す結果が出ている。以上、GPR84等で期待どおりの結果を得ていると共に、想定していなかった新たな結果が見出され、研究全体としはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
上記に示す通り、当初の予想とは違いGPR34を介さない形態変化に関する研究も進めることになる。具体的な実験計画としては細胞内情報伝達に関する種々の阻害剤等を用い、リン脂質による形態変化がどのようなシグナルを介するのか詳細に調べる。また他のリン脂質も同様に解析し、脂質メディエーターによるミクログリアの形態変化のメカニズムについて多面的に詳細な解析を進める予定である。このミクログリアの形態変化は受容体を介す現象ではない可能性も考慮してリン脂質が細胞に取り込まれ機能することについても検討していく予定である。さらにこのリン脂質の作用をGPR34ノックアウトマウスを用いて、in vivoで解析することによりGPR34依存的な作用と非依存的な作用を解析する。 GPR84についてはin vivoでのGPR84アゴニストおよびembelin, capric acidなどのGPR84リガンドの作用を調べると共に走化性に関する複数の実験系を組み、定量的に評価する。
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