研究課題/領域番号 |
15J02707
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
兒玉 直人 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 熱プラズマ / 酸化チタン / 分光観測 / ナノ粒子 / シリコン / 誘導熱プラズマ |
研究実績の概要 |
平成27年度(以下,本年度)においては,変調型誘導熱プラズマ(MITP)を用いた酸化チタン(TiO2)ナノ粒子生成時のトーチ内における原料蒸発および核生成過程の理解を中心として研究を行った. 画像分光器および高速度ビデオカメラを組み合わせた二次元分光観測系を用いてナノ粒子生成時におけるMITPトーチ部の二次元分光観測を行った.この分光観測結果から,トーチ内における原料蒸発蒸気およびナノ粒子前駆体分子の空間分布および時間変化を評価した.その結果,MITPトーチ内における原料の蒸発や前駆体の生成などの現象は,msオーダで制御可能であることを見出した.また,分光観測の結果からプロセス中のトーチ内の二次元Ti励起温度分布を導出した.これら求められた温度分布の計算結果および前駆体分子(TiO分子)分布の観測結果を比較した.その結果,原料粉体であるチタン粒子およびキャリアガスのトーチ内への導入によりトーチ中心軸上の温度が低下し,この温度が特に低下した領域でのみTiO分子が優位に生成されることがわかった.数値計算により得られたAr-O2-Ti蒸気の平衡粒子組成およびTiおよびTiO2粒子の核生成温度などとトーチ内の温度分布および前駆体分布を比較した.その結果としてMITPトーチ内において既にTiO2が核として生成される可能性があることが示唆された.この結果は,誘導熱プラズマを用いたナノ粒子生成プロセス中におけるナノ粒子の生成過程を理解する上で非常に重要な結果である. 本年度からは,新たにシリコン(Si)ナノ材料の大量生成法の開発にも取り組んだ. その結果,MITPおよび原料粉体の同期間歇供給法といった手法を用いることでSiナノ粒子を投入電力20 kWにおいて約120 g/hの生成効率で生成可能であることを見出した.さらに同生成法を応用することでSiナノワイヤを約1 g/hの高生成効率で生成可能であることを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度(以下,本年度)の研究における最大の研究成果は,熱プラズマを用いたナノ粒子生成プロセス中において二次元分光観測法を用いることでトーチ内部の二次元温度分布や原料蒸発蒸気および前駆体分子の二次元分布の評価が可能であることを見出した点にある.プロセス中の熱プラズマの二次元温度分布の検討は,これまでは殆ど数値シミュレーションによってのみ行われており,熱プラズマの計測から検討した例は非常に少なかった.蒸発蒸気分布や前駆体分子分布の評価に関しても同様である.本年度得られた各種粒子の放射強度分布やトーチ内の温度分布は,これ以降に検討を行う予定であるトーチ内部の各種粒子の数密度分布および熱力学・輸送特性分布の検討には必要不可欠なものである.この事から,平成28年度において検討予定である項目に関しても問題なく研究を進めることが可能である. 変調型誘導熱プラズマ(MITP)を用いたSiナノ材料生成に関しても,従来の誘導熱プラズマ法よりも高い効率でSiナノ粒子を生成できた.さらに高生成効率でのSiナノワイヤ生成にも成功した. 以上のことから,本年度の研究はおおむね順調に進展したといえる.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究において,プロセス中のトーチ内の温度分布やおおよその粒子核生成位置などが明らかになった.本研究の主目的である「MITP中におけるナノ粒子の生成過程の理解」を達成するためには,さらに厳密な核生成位置の検討や核生成後の粒子成長過程の検討などが必要不可欠である.また,実験結果を裏付けるための数値シミュレーションを行うことも重要である. 核生成位置の詳細な検討に関しては,分光観測から得られた二次元温度分布や特定のスペクトルの放射強度および理論的な計算から得られた特定のスペクトルの放射係数などを比較し,核生成周波数の空間分布を導出することで検討を行う.粒子成長の検討に関しては,低圧DMAや慣性フィルタを組み合わせたin-situ粒度分析システムを構築することで検討を行う予定である.また,数値解析的なアプローチとして熱平衡状態を仮定した上での誘導熱プラズマ内の原料粉体蒸発の二次元的な計算を行う.計算結果から得られた原料蒸発蒸気分布と前述した分光観測から得られた原料蒸発蒸気分布を比較・検討する.その結果から,観測・計算結果の妥当性を検討する. Siナノ材料生成に関しても平成28年度も同様に進める予定である.Siナノ粒子生成においては,単純なSiナノ粒子だけでなくカーボン粒子などをSiナノ粒子表面に担持させた複合型Si/Cナノ粒子の生成を進める予定である.Siナノ材料の生成に用いる変調型誘導熱プラズマの生成条件や原料粉体/ガス導入方法および蒸発した原料の冷却方法を検討することで,複合型Si/Cナノ粒子の高効率生成を目指す.
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