研究課題/領域番号 |
15J02739
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
幡地 祐哉 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | visual stability / optokinetic response / size constancy / motion parallax |
研究実績の概要 |
ニワトリにおける歩行時の頭部運動の機能を検討した。トレッドミルを歩行中のニワトリに対しオプティックフローを模した視覚運動刺激を提示し,歩行速度と刺激速度それぞれの頭部運動への影響を調べた。頭部運動は視覚運動刺激に対してそれと同方向に生じ,また刺激速度が上昇するにつれて頭部運動速度も上昇した。歩行速度は頭部運動速度に影響を与えなかった。トレッドミルが静止した状態では視覚運動刺激に伴う頭部運動は生起しなかった。これらの結果から,ニワトリが歩行中に示す頭部運動は自己運動に伴う視覚運動に対して生起し,視野のぶれを補正する視運動性反応の一種だと考えられる。また,静止時には頭部運動がみられなかったことから,歩行のオンセットによってそうした視運動性反応が誘発されるメカニズムがあり,歩行時と休息時で視覚処理の様式が異なることが示唆される。 奥行情報が物体の大きさ知覚に影響を与える「大きさの恒常性」を利用し,ハトにおいて運動視差手がかりと絵画的奥行手がかりが物体の大きさ判断に影響を与えるか調べた。格子模様の回廊上に様々な大きさのターゲットを提示し,ハトはキー押しによってそれを大・小に分類する課題を学習した。背景とターゲットが運動視差を含むよう左右運動する条件(運動条件)と背景とターゲットが静止した条件(静止条件)が設定された。これらの訓練後,絵画的奥行手がかり,運動視差手がかりを変化させた刺激を提示するテスト試行を挿入した。静止条件,運動条件ともに奥行手がかりが遠いターゲットを過大評価する傾向が見られ,ハトで回廊錯視が生じることが示された。また,絵画的奥行手がかりと運動視差奥行手がかりが不一致の条件では,絵画的奥行手がかりに従った錯視を示し,ヒトが示す大きさの恒常性と類似の傾向を示した。これらの結果から,ハトが示す大きさの恒常性のメカニズムがヒトのそれと類似することが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニワトリの歩行分析,ハトの奥行き情報利用の心理物理実験ともに当該年度において一定の成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に行った研究を土台に,新たな動物認知研究方法を実現する。 ニワトリの歩行訓練と,オペラント学習による知覚実験を組み合わせ,「歩行中の鳥類の知覚世界」を明らかにする実験・訓練方法を確立する。具体的には歩行運動が運動知覚,空間注意にどのような影響を与えるか調べる。 ハトの頭部位置をオプティカルトラッキングによって追跡,それに応じて刺激を変化させることで,「自己運動に伴う動的な知覚変化の利用」を調べる。具体的には自己誘発性の運動視差が大きさの恒常性,奥行知覚,運動調節にどのような影響を与えるか調べる。
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