平成29年度実施予定であった社会的注意の臨床場面における応用研究に着手はできなかったが、その準備過程において、バイオロジカルモーションとヴァーチャルリアリティによる研究を開始した。これにより、複数研究分野における学術論文投稿の準備を整えることができた。 1. 低次視覚レベルにおける社会的注意の検討 前年度に引き続き、社会的注意が低次視覚レベルにおいてどのような影響をもつのか、近年の実験手法Ultra-rapid detection/categorization taskおよびSaccade choice taskを用いて詳細に検討できた。特に、人間が他者を日常場面 (シーン) でどのように検出するかについて、視点情報によって変化する他者の見え方が、検出の正確さに頑健に影響することを実証できた (査読付きプロシーディングスとして採択)。また、こうした低次視覚レベルにおける視点情報の影響は、周辺視野ではみられないことも解明できた (投稿準備中)。現在は、この影響が社会的注意の制御に困難を抱える発達障害児にも生じるのか、検討中である。 2. 海外渡航先における研究遂行 前年度に引き続き研究遂行のためカナダに渡航し、当該研究分野で著名なProf. Monica Castelhanoから3Dコンピュータグラフィクス技術と眼球運動測定法を学び、習熟できた。加えて、バイオロジカルモーション研究の第一人者であるProf. Nico Trojeから、ヴァーチャルリアリティを利用した社会的注意の実験方法を習得することができた。日常場面における社会的注意を実験刺激として再現するための3Dオブジェクトおよびシーンの作成技術、眼球運動測定法とその解析法に加え、最新のヴァーチャルリアリティ環境の利用方法についても実践的な助言を得られ、実験が進んでいる (投稿準備中)。
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