研究課題/領域番号 |
15J02790
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
小袋 由貴 宮崎大学, 農学工学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | ビスマス系複合酸化物 / 異種元素添加 / 光触媒 / 微粒子 / 可視光応答 / 第一原理バンド計算 / バンドギャップ / 複合材料 |
研究実績の概要 |
可視光領域において優れた有機物酸化分解能を持つビスマス系複合酸化物光触媒の開発を目的として、1. 有機金属錯体の低温かつ短時間焼成による高比表面積なビスマス系複合酸化物微粒子の調製, 2. 異種元素添加による可視光吸収波長域の拡大(バンドギャップ狭窄化)に主に取り組んだ。 上述1では、有機酸錯体法またはヘテロ金属多核錯体法により前駆体粉末を合成し、空気中及び酸素雰囲気中で前駆体の熱分解挙動を調べた。熱処理には、電気抵抗式加熱炉(電気炉)とマイクロ波式加熱装置を使用した。 上述2では、ストロンチウム-ビスマス(SrO-Bi2O3)系複合酸化物に対してランタノイド元素を微量添加し、光吸収特性の変化を調べた。ランタノイド元素の中では、SrO-Bi2O3系複合酸化物のバンドギャップを減少させるためにはランタン(La)添加が最も有効であり、添加前と比較して可視光吸収領域が長波長側へ大きくシフトすることを見出した。La添加によるバンドギャップの狭窄化は、BiがLaで置換されるとBi-6s孤立電子対とO-2p電子との反発が消失して、局所的なBi周りの配位環境の歪みが緩和されることに起因することが第一原理分子動力学計算及びバンド計算から明らかになった。このようなビスマス系複合酸化物に対する異種元素の添加効果を実験と理論の両面から明確にしたのは、本研究が初めてである。 また、可視光照射下においてLaを添加したSrO-Bi2O3系複合酸化物粉末の揮発性有機化合物の酸化分解能力を評価したところ、バンドギャップの減少とともに、酸化分解活性(光触媒活性)が大きく改善されることが明らかとなった。SrO-Bi2O3系複合酸化物におけるLaの添加効果については、実験的および第一原理計算による理論的観点から詳細に検討し、その成果は学会発表や学術論文として公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、研究計画に沿って概ね順調に研究を遂行することができた。特に、ストロンチウム-ビスマス(SrO-Bi2O3)系複合酸化物にLaを添加するとバンドギャップが大きく減少することを実験的に見出すことができた点,及びバンドギャップが減少した理由について、第一原理分子動力学計算及びバンド計算から理論的に明確にできた意義は非常に大きい。さらに、La添加によってSrO-Bi2O3系複合酸化物の光触媒活性が実際に大きく改善されたことは、活性な可視光応答型光触媒の創製におけるバンドギャップ制御の重要性を示しており、今後の研究を展開する上において重要な指針になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、H27年度に得られたストロンチウム-ビスマス(SrO-Bi2O3)系複合酸化物に関する発見や重要な知見に基づいて、ビスマス系複合酸化物の一層の微粒子化や高比表面積化,及び粒子表面の微細構造制御(例えば多孔質化)について検討を行う。また、光触媒活性をさらに改善するために、ビスマス系複合酸化物と異種酸化物をヘテロ接合して界面電場を構築し、可視光吸収特性を改善するとともに電荷分離効率の高い材料系の設計を行う。
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