研究課題
本研究では、加齢や身体機能の低下により一人で過ごす時間が多くなっても、主観的Well-beingが維持されるというAging paradoxにおいて、独自志向性を含んだ個人要因との関連を検証することを目的とした。第一に、加齢による社会的接触頻度や孤独感、及び独自志向性の変化を検討するため、青年期から高齢期までの年代を対象とした多世代縦断データを収集した。予定通り、第一波の調査を実施し、使用する尺度の信頼性と妥当性、およびインターネット調査におけるサンプルバイアスを確認するため前述した変数の他に性格特性との関連を検討した。その結果、調査対象となった高齢期群は、他の若い世代よりも開放性や誠実性が高いことが分かったが、その効果量は小さいことが示された。インターネット調査の対象者の特徴として、高齢期群の性格特性に他の年代とは異なる特徴があることが考えられるが、本研究の結果に与える影響は極めて小さかった。得られた分析結果は、第31回国際心理学会議(ICP2016)にて発表予定である。第二に、身体疾患の中でも社会的活動範囲に影響を及ぼすと考えられる、視覚障がいの影響を検討するため、高齢の視覚障がい者を対象としたインタビューデータの分析に取り組み、施設入居後の適応過程について検討した。得られた結果として、施設生活への適応に関する要因として、自分の落ちつける空間を確保し、社会的活動範囲の拡大に繋げることが挙げられた。第三に、加齢と全般的な身体機能の低下の影響と検討するため、ジョージア百寿者研究のデータを再分析した。その結果、超高齢期では視覚機能の低下が重篤である場合、周囲との社会関係の満足度と主観的Well-beingとの関連性が弱いことが明らかとなった。得られた結果は、国際百寿者研究会・アメリカ老年学会にて発表し論文としてまとめ、国際誌Gerontologistに現在投稿中である。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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生老病死の行動科学
巻: 20 ページ: 13-23
老年社会科学
巻: 38 ページ: 印刷中