本年度は、ランプライターランダムウォーク(LRW)と呼ばれる、グラフ上のランダムウォーク(RW)がさらにグラフの頂点のランプを付けたり消したりするようなものに対し、その混合時間やカットオフ現象についての研究とescape rate (ER)についての研究を主に行った。
1. LRW の混合時間とカットオフ現象について。本研究では主に、フラクタル上のLRWの、スペクトル次元が2以下での領域でのカットオフ現象を解析した。本研究は Miller と Peres 氏らの2012年に出版された論文の結果の拡張にあたる。彼らの結果を合わせることで、スペクトル次元が2未満ではランプライターランダムウォークにはカットオフ現象が見られないのに対し、スペクトル次元が2以上ではランプライターランダムウォークにはカットオフ現象が見られるという、スペクトル次元に関しての両分を見出すことができた。この解析において、スペクトル次元が2未満の場合に、被覆時間(ランダムウォークがグラフのすべての点を訪れるための時間)が平均に集中していないという、独立に興味深い事実も並行して示した。本研究の結果をまとめ、雑誌に投稿した。
2. ランプライターランダムウォークのERと呼ばれる、出発点から離れていくスピードに関する量について、とくにランプの状況をより一般化して可算無限グラフの場合に解析した。グラフ上のRWが隣接点に限らず遠くに離れている点にも推移する飛躍型のランダムウォークが従う熱核評価を仮定して、重複対数の法則というサンプルパスレベルでのERの解析を行った。一方、飛躍型の熱核評価を仮定したときにランプが通常の場合、つまり点灯しているかいないかの二つの状態のみの場合には解決できておらず、今後の研究課題である。
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