研究課題/領域番号 |
15J02840
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田崎 亮 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 高空隙ダストの散乱特性 / 原始惑星系円盤の観測予測 |
研究実績の概要 |
本研究は理論と観測の両面から、原始惑星系円盤初期のダスト分布を明らかにすることを目的としている。観測の観点から、円盤におけるダストのサイズ等の情報を得るためには、ダストの光学特性が極めて重要となる。特に、近年、円盤におけるダストは高い空隙率を持つことが理論的に予想されているため、高空隙率ダストの光学特性が重要となる。 平成27年度は、T-Matrix法と呼ばれる厳密な数値計算手法を用いて高空隙率ダストの光学特性を計算した。この手法は、厳密な計算結果を得られる一方で、計算コストが高いというデメリットがある。そこで、高空隙率ダストがフラクタル構造を持つことを仮定し、ダスト内において光が1回だけ散乱されるという近似のもとで、解析的に高空隙率ダストによる光散乱の解を導出した。次に、得られた解析解と厳密な数値計算法によって得られた結果との比較を行った。その結果、解析解は従来よく用いられてきた近似法に比べて、遥かに良い精度で厳密な計算結果を再現することを示した。これにより、従来計算が困難であった粒径の大きな高空隙率ダストの光学特性計算が可能となり、実際の観測を高空隙ダストの観点から定量的に解釈することが可能となった。 続いて、自身が構築した高空隙率ダストの光学特性計算手法をもとに、原始惑星系円盤の3次元輻射輸送計算を行うことで、高空隙率ダストが存在する円盤の観測的性質について調べた。その結果、高空隙率ダストからなる円盤の特徴的な点として、傾いた円盤を観測すると表面輝度に非軸対称構造が現れ、同時に散乱光は強く偏光するという性質を持つことを明らかにした。また、得られた理論予測と実際の観測との比較を行った。 以上の研究成果を2編の論文にまとめ、うち1編は査読付き国際学術誌に投稿し、受理されている。もう1編は現在、国際学術誌への投稿に向けて準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究では、高空隙ダストの光学特性を解析的なアプローチによって明らかにした。加えて、解析的なアプローチに基づいて輻射輸送計算を行うことで、理論モデルと実際の観測の比較検討を行うことができる段階にまで到達した。このように高空隙ダストの光学特性モデルの構築のみにとどまらず、実際の観測との比較検討を行えたことは予想外であり、当初の計画以上に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度では、まず近赤外線の円盤の観測予測と実際の観測との比較についての論文を国際学術誌へ投稿する。次に、平成27年度に構築した光学特性モデルの近似が破綻してしまう圧縮されたダストについての光学特性モデルを構築する。このようなダストの光学特性を明らかにすることで、電波域の円盤観測からダストの情報を抽出することが可能となる。圧縮されたダストに対する光学特性モデルと、平成27年度の成果を組み合わせることで、近赤外線域から電波域にかけて、多波長で円盤内に存在するダストの性質を明らかにする。
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