研究課題/領域番号 |
15J02855
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
河村 裕樹 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | エスノメソドロジー / 会話分析 / 医療社会学 / スティグマ / 精神疾患 |
研究実績の概要 |
2016年5月に日本保険医療社会学会で、現在調査を行っている精神デイケアにおいて為される相互行為を分析した報告をした。患者同士の相互行為をエスノメソドロジーの視点から分析した研究は、日本のみならず世界的に見ても希有であり、活発な議論が展開された。 2016年10月に日本社会学会にて、診療場面を録音したデータを用いて、投薬の具体的なやりとりに着目した会話分析を行った。この報告内容も、日本においては先行研究が1つしか存在せず、データとしての価値もさるところながら、分析についても評価を得た。 また、2016年9月に、これまでの研究成果の一部を論文化したものを日本社会学理論学会へ投稿し、数度の査読を経て、2017年3月に刊行された。理論的な面で本研究に貢献しうる点を再検討したことで、調査至上主義に陥らず、理論と実証のバランスを取るという研究方針のひとつの具体的な成果である。 これらの具体的な成果を果たすために、方法論に関する研究会に参加し、他研究者のニーズに応じて新たに研究会そのものを発足させ、様々な観点からの意見や知見を取り入れることで、多様な立場に研究の成果を還元できるよう工夫し、その成果が上述のとおり具体的にひろく公開することができた。 今後も研究の成果を幅広く公開することで、医療社会学の発展に寄与することを目指す一方で、方法論の具体的な適用事例としても評価されうる研究をする。そして採用期間中の成果を博士論文としてまとめ、これまでの研究をさらに発展的に展開する足場を構築する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度は、2つの学会で報告をすることで、幅広い立場から有益なコメントを得る機会を活用することができ、それが今後の研究へとつながる人脈という面でも大きな収穫があった。 また博士課程進学後の研究の成果として、査読論文を刊行することができたことは、本研究の進捗において、客観的な評価が下されたと判断できる。また分析手法についての研究会に参加するだけでなく、新たに設立することで、様々な立場の研究者からのコメントを得る機会を設け、データ分析の水準を上げるよう活発な議論をしたことが、具体的な成果として現れたと思われる。 以上のように、学会報告と査読論文の刊行という、研究においてもっとも根幹的かつ重要なことを成し遂げたことから、研究は順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
研究で使用するデータのうちの一部は、データそのものが飽和状態になったと判断したため、調査を休止し、これまでのデータを再検討し、論文に結実するようさらなるブラッシュアップを図る。 一方で理論的な側面に関しては、様々な機会を活用して積極的に知識を吸収し、当初の研究計画で掲げた「理論に裏付けられた実証、実証に裏付けられた理論」という方針を査読論文という具体的な形で示す。 また今後のさらなる発展的な研究の展開のために、比較的研究領域の近い研究者とコンタクトを取り、対話の場を設ける。一部は研究協力という形で具体的に研究に参加し、本研究の意義や成果、新規性をひろく共有することで、医療社会学そのものの発展に寄与することを目指す。
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