生態学や環境問題の現場における複数のステークホルダー間の意志決定の研究として、アジアの熱帯林、とりわけインドネシアの国営プランテーション林(生産林)経営の現場を題材として選び、最適な意思決定の方策について数理モデルを用いて調べた。土地所有者である国営企業と労働者であるコミュニティのそれぞれの収益をモデルに表し、植林地を農業作物へ利用できるようにする制度:アグロフォレストリーや、木材から得られる利益を労働者へ配分する利益分配制度の効果を解析した。 樹木の生存率が低く将来収益の見込みが小さい場合においては、木を長く育てるよりも、アグロフォレストリーの制度を適用可能な比較的短い期間のみ木を育て農業生産を続けた方が高い利益を得られる場合があることが示された。また第三者による違法伐採が起こることで再植林の必要が生じ賃金が得られるため、特に植林初期の段階において労働者が違法伐採を見過ごすような期間が生じえることを示唆した。本研究の内容は、論文として国際誌へ投稿し、現在改訂審査中である。 本研究は、インドネシア国有林の管理や経営を政府と共同で行なっているガジャマダ大学森林学部の研究者らとの共同研究であり、また、研究代表者が現地に赴きインタビュー調査を行なった成果に基づいた理論研究である。プランテーションに代表される熱帯林の管理について大きな貢献につながると期待される。また、今後も引き続き共同研究を進め、理論の応用や社会実装を目指していく。
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