本研究の目的は,実用化に資する,白金を含まない水素/酸素バイオ電池を構築することである.昨年度までは,水素酸化極(アノード)と酸素還元極(カソード)の単極性能に焦点を当て,両者の性能を向上させてきた.平成28年度では,両極ガス拡散型水素/酸素バイオ電池の構築,及び酸素還元酵素であるマルチ銅オキシダーゼ(BOD)の電気化学的反応解析に関する研究を推進した. 前者では,これまでの研究を総合することで,“両極ガス拡散型水素/酸素バイオ電池”を構築し,その性能評価を行った.ガス拡散型システムでは,ガス状基質を気相から直接的に取り込むため,溶解度の低い基質(水素や酸素)の供給速度を大幅に向上させることができる.また,水素/酸素バイオ電池にガス拡散型システムを導入した例はこれまでになく,世界で初めての試みである.本成果は,J. Mater. Chem. A誌に掲載済みである. 後者では,バイオ電池において,酸素還元触媒として働く酵素特性の理解を更に深める研究を行った.カソード酵素であるBODは,熱力学的過電圧が小さい上に,触媒活性が高い特徴を有するため,世界中で幅広く利用されている.そのため,カソードにおけるBODの反応機構をより詳細に理解することは,様々なバイオ電池の更なる性能向上に大きく寄与する.そこで,触媒電流が大きい条件におけるBODの電気化学的反応解析式を考案し,各種電極における測定結果を解析した.本成果は,J. Electroanal. Chem.誌に掲載済みである.
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