これまでに,高橋篤史氏と和田健太郎氏との共同研究において,良い代数的な三角圏から,一般化ルート系が構成されることを示していた.この場合,格子はグロタンディーク群,カルタン形式は対称化されたEuler形式,実ルートの集合は例外対象の集合,コクセター元はセール函手から誘導される自己同型写像となる. 本研究では,一般化ルート系において,Euler形式に対応する双線型形式がそもそも存在するのではないか?という自然な問題に対し,格子上の双線型形式で,(a)対称化がカルタン形式となり,(b)コクセター元により,セール双対を満たすものが一意的に存在するという答えを与えた.また,一般化ルート系の間の射を,カルタン形式に対して等長的で,実ルートの集合の間の射を定め,コクセター元と両立する線型写像として定義した.この定義のもと,カルタン形式が正定値となる一般化ルート系の同型類が,R.W.Carterの許容的図形と対応することを示した.以上の結果を論文としてまとめた.(高橋篤史氏・中村俊輔氏との共同研究)
実鏡映群の場合には,齋藤恭司氏によるフロベニウス構造の研究がある.一方で,最近,加藤氏・関口氏・真野氏により,良生成(生成元が階数個または階数個より一つ多い)な複素鏡映群の不変式論に対して,Sabbahの意味での計量なし齋藤構造が構成されることが示された. 本研究では,良生成でない場合においても,計量なし齋藤構造を構成できるか?という自然な問題に答を与えた.具体的に,小西氏により,その不変式論に対して,計量なし齋藤構造が入らないものが同定された.残りの例では,良生成な複素鏡映群に対する不変式論に対する被覆になっており,分岐因子を除いて計量なし齋藤構造が入ることが分かった.(小西由紀子氏・三鍋聡司氏との共同研究)
|