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2015 年度 実績報告書

強レーザー誘起多電子ダイナミクスにおける時間依存の一電子有効ポテンシャルの構築

研究課題

研究課題/領域番号 15J02949
研究機関東北大学

研究代表者

大村 周  東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2017-03-31
キーワード電子ダイナミクス / 有効ポテンシャル / 強レーザー場 / 高次高調波発生 / MCTDHF法 / FEL
研究実績の概要

複雑な電子相関を含む強レーザー場中における多電子ダイナミクスを理解するために、適切に電子相関を取り込める多配置時間依存Hartree-Fock(MCTDHF)法を用いてシミュレーションを行い、自然軌道という一電子描像に基づいて解析している。
1.MCTDHF法のプログラムに並列化を実装し、これまで対象としてきたH_2分子やLiH分子よりも多電子系であるCO分子の電子ダイナミクスを計算した。得られた結果から高次高調波スペクトルを求め、それを自然軌道ごとに分解して、各軌道の全スペクトルへの寄与を定量化した。CO分子の場合、HOMO(5σ)だけでなく、HOMO-1(1π)やHOMO-2(4σ)も寄与することがわかった。さらに、入射波の搬送波位相を変化させて計算を行い、イオン化の異方性を利用して各軌道の寄与を搬送波位相制御できることを見出した。
2.多電子ダイナミクスを、電子相関をとりこみつつ視覚的に理解するために、自然軌道の運動方程式を駆動する一電子局所有効ポテンシャルを導出した。CO分子についてMCTDHF法で得られた自然軌道を使って有効ポテンシャルを計算したところ、レーザー電場の時間変化に伴ってポテンシャルが変形し、電子の動きと相関していることがわかった。ただし軌道によって発散する点があり、まだ全空間で滑らかなポテンシャルは得られていない。
3.内殻電子のダイナミクスを調べるために、XUV領域(約20 nm)の自由電子レーザーを仮定したシミュレーションをLiH分子について行った。全電子エネルギーが電場とともに変化し、電場が切れたあとに保存することが確認できた。
4.多電子ダイナミクスの自然軌道解析を化学反応に応用するために、NaH分子を対象に、擬交差を伴う光解離反応の半古典シミュレーションを行った。擬交差領域を通過する際に、非断熱遷移に関与する自然軌道同士がエネルギー交換を行っていることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

プログラムに並列化を実装して、これまで行ってきたH_2やLiH分子よりも多電子系の実時間シミュレーションが可能になった。CO分子について電子ダイナミクスのシミュレーションを行い、高次高調波スペクトルを計算した。双極子モーメントを各自然軌道に関する和として表して、各軌道からの高次高調波スペクトルを求めた。また、搬送波位相を変化させて計算したスペクトルを比較したところ、軌道のイオン化の異方性を利用してスペクトル強度を制御できることを見出した。
自然軌道の運動方程式を駆動する一電子有効ポテンシャルを、MCTDHF法によるシミュレーションから得られた自然軌道を用いて計算するプログラムを実装した。CO分子について有効ポテンシャルの計算を行ったところ、レーザー電場の時間変化とともにポテンシャルが変化して、電子ダイナミクスとの相関があることがわかった。しかし、全空間で滑らかなポテンシャルが得られておらず、今後発散する点の処理を行う予定である。
XUVパルスを仮定した内殻電子ダイナミクスのシミュレーションをLiH分子について行った。全電子エネルギーがレーザー電場が切れたあとに一定となり、安定して時間発展できることを確認した。
NaH分子の擬交差を伴う光解離反応の半古典シミュレーションを行い、これまで電子ダイナミクスの解析に用いていた自然軌道の時間依存化学ポテンシャルによる解析を行った。その結果、擬交差を通過する領域で、非断熱遷移に関与する軌道間でエネルギー交換を行っていることを明らかにした。これにより、電子と原子核のダイナミクスが相関する非断熱遷移の解析にも、自然軌道による解析が有用であることを示した。

今後の研究の推進方策

2016年度は全空間において滑らかな一電子局所有効ポテンシャルを得るために、発散する点をロピタルの定理などを利用して処理する。得られたポテンシャルが、これまで行ってきた近赤外強レーザー場における電子ダイナミクスの解析に有用であることを示す。
XUVパルス照射下におけるシミュレーションをLiHについて引き続き行い、内殻励起などの内殻電子ダイナミクスを求める。基底状態のポピュレーションや誘起双極子モーメントの時間変化と、内殻電子(1σ)の有効ポテンシャルの時間変化を比較する。レーザーパルスの波長や強度を系統的に変化させて、内殻電子がどのような力を受けて動いているかを明らかにする。
近赤外光との相互作用とXUV光との相互作用における有効ポテンシャルの時間変化から、価電子と内殻電子の統一的な電子ダイナミクスの原理解明を目指す。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] 分子の複数軌道の高次高調波発生への寄与と搬送波位相制御2015

    • 著者名/発表者名
      大村周, 河野裕彦, 小山田隆行, 加藤毅, 中井克典,小関史朗
    • 学会等名
      第9回分子科学討論会
    • 発表場所
      東京工業大学大岡山キャンパス(東京都目黒区)
    • 年月日
      2015-09-16 – 2015-09-19
  • [学会発表] Electron dynamics in nonadiabatic transitions through an avoided crossing: Energy analysis of time-dependent molecular orbitals2015

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Sato, Shu Ohmura, Manabu Kanno, Hirohiko Kono
    • 学会等名
      31st Symposium on Chemical Kinetics and Dynamics
    • 発表場所
      北海道大学工学部(北海道札幌)
    • 年月日
      2015-06-03 – 2015-06-05
    • 国際学会
  • [学会発表] 高強度超短パルスによる分子の高次高調波発生の自然軌道解析と制御2015

    • 著者名/発表者名
      大村 周,河野 裕彦,小山田 隆行, 加藤 毅, 中井 克典, 小関 史朗
    • 学会等名
      第18回理論化学討論会
    • 発表場所
      大阪大学豊中キャンパス(大阪府吹田市)
    • 年月日
      2015-05-20 – 2015-05-22

URL: 

公開日: 2016-12-27  

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