研究実績の概要 |
これまでにジシラシクロヘキセンのトリメチルシリル基の引き抜きによるジシレニド(ビニルアニオンのケイ素類縁体)への変換と続く酸化的カップリングによってテトラシラ-1,3-ジエンの合成を達成していた。今回、さらなるπ共役系の拡張を目指しテトラシラ-1,3-ジエンからテトラシラジエニド(テトラシラジエンのアニオン種)への変換を検討した。その結果、目的としたアニオン種は得られず、その分子内環化反応によって生成したと考えられるアニオン種が得られた。この結果から、さらなるπ共役系の拡張を達成するためにはテトラシラジエニドの分子内環化反応を抑制する必要があると示された。 この結果から、新たな分子設計として嵩高いアリール基である2,4,6-トリイソプロピリシリル基とトリメチルシリル基を有するジシレンを基本ユニットとして用いた検討を行った。これまでに開発した手法により、ジシレンをジシレニドへと変換した後、酸化的カップリングにより新規テトラシラ-1,3-ジエンを合成した。 得られたテトラシラジエンとカリウム-tert-ブトキシドの反応を室温で行ったところ、先と同様に分子内環化生成物が得られた。一方で18-クラウン-6-エーテル存在下、低温で反応を行ったところ、テトラシラジエニドの発生が確認された。化合物の発生は低温NMR、さらにトリエチルクロロシランを用いた捕捉反応によって確認した。なお、テトラシラジエニドの発生、観測および捕捉は世界で初めての例である。現在、テトラシラジエニドの酸化的カップリングによるオクタシラテトラエンの合成を目指している。
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