本研究は、Flibe (LiF-BeF2) およびFlinabe (LiF-NaF-BeF2) などの既存溶融塩に対し、重元素を添加した自己発熱機能を有する高性能新型溶融塩の開発、およびその溶融塩を用いたブランケットシステムの設計最適化を目指す。 昨年度Flinabeにおいても熱物性改善が必要であると結論付けられたことから、異なる物質を添加した場合の熱物性評価を実施した。自己発熱性を発現させる添加候補としてCsFを考え、FlibeにCsFを添加した三元系溶融塩の熱物性(比熱、粘性、熱伝導率)について数値解析評価した。CsF添加量が小の場合、熱物性は元のFlibeから大きく変化しない。しかし、CsFの質量が大であることから、CsF比増大に伴い熱伝導率が著しく減少してしまうことが明らかとなった。以上から、Flibe+CsFのFlinabeに対する優位性は見られなかった。ただし、FlibeにCsFを少量添加した場合、融点が最大で約40 K減少することがこれまでの実験により明らかとなっている。よって、Flinabeに対し少量のCsFを添加することで、Flinabeの熱物性を大きく変えることなく、融点のみが減少する可能性が考えられる。 また、溶融塩を簡便かつ大量に精製できる手法確立を目的として、一方向凝固法の適用性を評価した。昨年度のFlinakに引き続き、本年度はFlibeを対象とした。その結果、主にBeF2に含まれている黒色の不純物が試料上部に偏析する様子を観測した。また、ICP-MSにより金属不純物量を分析したところ、不純物の中でも特に多く含まれる鉄元素が試料上部に有意に偏析するという結果が得られている。さらに本手法は偏析現象を利用しているため、組成を適当に配合したとしても、試験後には自動的に共晶組成に調整されるという利点もあり、溶融塩精製の際に極めて有効な手法であると考えられる。
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