研究課題/領域番号 |
15J03089
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 圭一 東北大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 気候変動政策 / 政策ネットワーク / 社会ネットワーク分析 / 温暖化政策 / 言説ネットワーク / ドイツ / 比較政治 / 政治過程 |
研究実績の概要 |
日本とドイツの気候変動政策の特徴がいかに生み出されるのかを明らかにするため、以下の三つの課題に取り組んだ。 a)国内政策過程研究:本年度はとりわけ日本の気候変動政策が変化する外的要因について探った。第一に、海外団体からもたらされる情報である。調査票データをもとに海外団体のもつ政策形成への影響力および海外団体からの情報を得ることが、国内の政策アクターの影響力向上につながるかどうかを検討した。第二に、市民からの提言活動である。調査票調査から、震災前後の市民による提言活動の変化を分析した。 b)比較研究:日本の政策アクターの動向は、海外と比較した場合どのような位置取りにあるのかを検討した。第一に、調査票調査をもとにドイツ・アメリカの団体を、日本のデータと同様に積極派・中間派・消極派の三つに分類し、それぞれのグループ間の情報共有や協力関係の強さを分析した。第二に、調査票調査をもとに日本とドイツの経済セクターの気候変動政策に対する政策選好の違いを検討した。以上のa, bの分析結果を 3rd ISA Forum of Sociologyおよび 24th World Congress of Political Science にて報告した。 c)理論研究:第一に、環境政策の発展を歴史的に研究する上でどのような枠組みが必要なのかを理論的に研究し、西澤・喜多川編(2017)に発表した。第二に、社会ネットワーク分析を言説分析に応用する場合にどのような分析が可能かを事例研究とともに検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に続けて政策過程論アプローチによって、日本とドイツほかの国々との気候変動政策過程の比較研究を進めるという研究課題を、国内政策過程研究・他国間比較研究・理論研究の3つの側面、いずれの点からも順調に進めることができた。 特にCOMPONプロジェクト質問紙調査を用いて、日本とドイツの政策アクターの動向の違いを実証的に明らかにした。これまで各国ごとに行われていた政策過程研究の国際比較を具体的に進展させる大きな一歩となるものであった。本年度は言説ネットワークの展開や環境政策史研究の枠組みなど、理論的な考察もすすめた。 ドイツ・コンスタンツ大学では、複数の共同研究を進めており、新たな知見を吸収しつつ、これまで蓄積してきた知識を整理しながら、今後の研究の展開を図るための着実な進展が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の作業を通じて、日本とドイツの気候変動政策過程の違いがかなり明らかになった。平成29年度は、引き続きこれまでの分析を継続すると同時に以下2点についてより深く検討したい。 第一に、日本とドイツの原発・エネルギー政策に関連する市民による提言活動の違いである。平成28年度の分析では、日本においても東日本大震災後にこれまで以上に多様な人々が原発・エネルギー政策に対して意見を表明するようになった。しかしそれは議会外の社会運動の活発化として顕在化する一方、政党を通じた議会内政治には結びついていない。ドイツと日本で国家と社会をつなぐ回路の違いはどこにあるのか、その担い手、媒介団体、制度についてそれぞれ検討したい。 第二に、日本とドイツの科学的情報を扱う団体の役割の違いである。平成28年度の分析では経済団体のもつ政策選好が日本とドイツで大きく異なることが明らかになったが、この政策選好の違いはそれぞれの団体のうける科学的情報の違いに最終的には帰結すると考えられる。この視点から、平成29年度は政策過程における科学的情報の役割について重点的に検討したい。
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