研究実績の概要 |
当研究室では枯草菌B. subtilisから新型のテルペン環化酵素(TS)を発見した。B. clausiiにおけるTSホモログ(Bcl-TS)は二機能性セスタテルペン(C25)/head-to-tail typeトリテルペン(C30)合成酵素であることを報告している。しかしながら、Bcl-TSの基質であるGFPPとHexPPのin vivoにおける確認はされていなかった。そこでB. clausiiにおけるE型イソプレニル二リン酸合成酵素(E-IDS)の同定とイソプレノイド代謝物の解析を行った。B. clausiiにおけるE-IDSのホモログはE-IDS1とE-IDS2-S/Lのみ存在した。E-IDS1は、すべての生物でイソプレノイド生合成のスターター基質として用いられるDMAPP(C5)からFPP(C15)とGGPP(C20)を生成した。一方、E-IDS2-S/Lは、DMAPP、FPPおよびGGPPをアリル型基質としたときに、C25, C30およびC35を生成した。二つのE-IDSの解析結果によってC35の経路が存在することが示唆されたため、B. clausii菌体内のイソプレノイドの詳細な解析を行った結果、微量成分の新規非環状C35炭化水素を同定した。また、GFPP, HexPP, HepPPはメナキノン(MK)の側鎖に利用されていることが知られていることから、MKの生産量を分析した。その結果、非環状テルペンの鎖長分布(C25:C30:C35 = 57:39:4)とは大きくことなっており、MK-7 (側鎖がC35)が主であることが判明した(MK-5:MK-6:MK-7 = 0:9:91)。今回E-IDS1とE-IDS2-S/Lを各々、二機能性FPP/GGPP合成酵素と三機能性 GFPP/HexPP/HepPP合成酵素と同定し、Bcl-TSを三機能性テルペン合成酵素として再同定した。特に、本研究は、多機能性E-IDSの同定にイソプレノイド代謝物の解析が極めて重要であることを示している。以前、単機能E-IDSとして同定されているものも、酵素反応実験において複数の生成物を与えるものが多数報告されており、今後それらのイソプレノイド代謝物の解析によって多機能性E-IDSとして再同定されるかもしれない。
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