研究課題/領域番号 |
15J03164
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中薗 寿人 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 経頭蓋交流電気刺激 / 運動誘発電位 / 視覚誘発電位 / 視覚野 / 運動野 |
研究実績の概要 |
一次運動野(M1)に対する経頭蓋交流電気刺激(tACS)の刺激後効果(オフライン効果)について、運動誘発電位(MEP)の振幅を指標に検討した(対象は健常右利き成人12名)。結果として、10 Hzと20 HzのtACS後において一時的にMEPの振幅に差がみられたが、期待された持続的なオフライン効果は確認されなかった。そのため、10 Hzや20 HzのtACSのみでは持続的な効果をM1に誘導することは難しいと考えられた。 一方で近年の報告では、視覚野に対して10 Hzあるいはα帯域のtACSを行った場合に、刺激後にα帯域の振動活動が増大し、その効果が持続することが示唆されている。そのため10 Hzや20 HzのtACSでは運動野よりも視覚野でより明瞭な刺激後効果を誘導できる可能性があると考えた。そこで本研究では、視覚野に対して10 Hzと20 HzのtACSを行い、刺激前後の視覚皮質の興奮性変化を視覚誘発電位(VEP)にて評価することとした(対象は健常成人13名)。VEPはPattern Reversal VEP (PR-VEP)とFocal Flash VEP (FF-VEP)の2種類を用いた。その結果、10 HzのtACSでは20 HzのtACSと比較し、刺激後にPR-VEPのN75-P100の振幅を有意に増大させ、その効果は刺激後30分以上持続した。このことから、10 HzのtACSは視覚システムの特異的なチャネルを選択的に活性化させ、さらにその効果がより持続したことから、tACSによる可塑的変化は視覚野において誘導されやすい可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一次運動野に対するtACSの刺激後効果の検討において、期待した持続的な可塑性の誘導は確認されなかった。しかし、刺激部位によって効果の持続性が変化すると仮説を立て一次視覚野を刺激した結果、より持続的な可塑性を誘導することができた。 これらの結果はtACSの新たな可能性を示す大きな研究成果であり、適切な作業仮説の立案と研究に対する臨機応変な取り組みによるものである。
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今後の研究の推進方策 |
一次運動野に対するtACSの効果の検討について、今後はtACSと反復ペア経頭蓋磁気刺激とを組み合わせた刺激など、よりM1の可塑性を誘導できる刺激方法について検討していきたい。 また、視覚野に対するtACSの効果については、今後VEPと脳波の測定を行い、tACSの効果機序の解明を行っていきたい。
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