研究実績の概要 |
神経細胞は通常1本の軸索と複数の樹状突起を有する高度に極性化した細胞である。軸索と樹状突起は共通の突起から形成されることが知られており、神経極性の破綻が破綻すると複数の軸索が形成される。そのため、1本のみの軸索が形成・維持されることが神経細胞の極性形成において極めて重要である(有村 & 貝淵, Nat. Rev. Neurousci., 2007;髙野ら, Development., 2015)。しかしながら、どのようにして共通の神経突起から 1 本の軸索と複数の樹状突起への運命決定かが制御されるのか、その分子機序は長年謎に包まれていた。そこで本研究では、1本のみの軸索形成を制御する分子機序を細胞外環境から細胞内への一連のシグナル伝達経路まで包括的に解明することを目的とした。これまでに、神経細胞が極性を獲得する際に、神経栄養因子(NT-3)に応答して軸索の末端から細胞体にかけて長距離のCa2+伝播が発生していることを見出した。この長距離Ca2+伝播は、細胞体においてCaMKI依存的にRhoAを活性化することが判った。そこで、今年度はどのようにしてCaMKIがRhoAを活性しているのか、その詳細な分子機序の解明を行なった。具体的には、リン酸化プロテオミクス解析を用いてCaMKIの新規基質としてRhoAの特異的活性化因子GEF-H1を同定した。さらに、GEF-H1のリン酸化部位を同定し、生体内においてもCaMKIによってリン酸化反応が誘導されていることを示した。また、このリン酸化依存的にGEF-H1が活性化することがわかった。
|