研究課題/領域番号 |
15J03176
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松木 昌也 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | イオン伝導 / 整流 / disordered crystals / ratchet |
研究実績の概要 |
本研究ではイオンの整流作用を示すイオン伝導システムの開発を目標とした。整流作用を発現させるために、我々はラチェット構造とDisordered Crystalsに着目した。ラチェットとは周期的な非対称構造によって動作方向を一方向に制限する仕組みである。またDisordered Crystalsは結晶性のイオン伝導体である。イオン性Disordered Crystalsにキラリティを導入し、そのイオン伝導特性を評価した。一昨年度テトラエチルアンモニウムとD-10-カンファースルホン酸から成るイオン対1についてイオンの拡散運動が結晶中で指向性を有していることが示唆された。 昨年度は我々は系統的な構造の違いに伴う物性評価を目的とし、イオン対1の類似体としてテトラメチルアンモニウムとD-10-カンファースルホン酸のイオン対2について結晶構造とイオンの運動性について検討した。 DSC測定の結果、イオン対2は4つの結晶相を有していることがわかった。次に単結晶X線構造解析の結果、キラルな空間群となり、その結晶構造はアニオンのカンファー部分のカルボニル基が+b軸方向に傾いて配列した、ラチェット状構造であった。次に固体NMRによりイオン対2の運動性を評価した。その結果イオンが回転運動していることがわかり、イオン対2がDisordered Crystalであることが示された。 最後にイオン伝導度を交流インピーダンス測定によって評価した。その結果イオン伝導度が非常に低いことがわかり整流性の測定はできなかった。イオン伝導度が低い原因としてはイオン中心間の距離が近いことや格子欠陥が少ないということが考えられる。今後はより伝導性の高い材料によって物性測定していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キラルな柔粘性結晶において、イオン伝導の整流性を実現するというチャレンジングな研究課題に果敢に挑戦している。一昨年度は、粘り強く実験を行った結果、研究を進展させることができた。昨年度は類似の化合物における相転移や結晶構造、イオンの運動性についての検討などを行い現象のさらなる理解に取り組みましたが、実験の再現性をとることなどに苦しみ期待していたような研究の進展は見られなかった。しかし得られた知見・成果については第10回分子科学討論会においてポスター発表し、国際学術論文誌に2報分の投稿準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
単結晶による伝導測定の再現性をとることが難しいことがわかってきたので、他の系についての検討を行う必要があるのでその検討を行う。また今後はこれまでのイオンの回転運動と結晶構造についての知見・成果を論文にまとめて投稿するとともに、新たな研究テーマを立ち上げていくことを目指す。新たな研究テーマについてはまだ検討中であるが、整流作用を目指して行ってきた非対称な結晶構造についての知見を活かした研究を行っていく予定である。
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