| 研究課題/領域番号 |
15J03197
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| 研究機関 | 総合研究大学院大学 |
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研究代表者 |
松本 悠貴 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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| 研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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| キーワード | マウス / ゲノム解析 / シミュレーション / 選択交配 / 従順性行動 / 家畜化 / イヌ |
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| 研究実績の概要 |
動物が人に対して馴れる行動（従順性行動）は、家畜化の過程で人為的な選択を受けてきたと考えられる。この行動は複数の種において見られる行動であることから、種間で共通した進化を明らかにすることに適したモデルになると考えられる。また、この行動は不安と関連していることが報告されているため、この行動の分子メカニズムの解明により、ほ乳類における不安に関する理解が深まると考えられる。本研究では、従順性行動に関わる遺伝領域を明らかにすることを目的とした。
本年度では、前年度に特定した候補遺伝領域が存在する１１番染色体がMSM系統に置き換わっているコンソミックマウスを用いて、従順性に対する候補遺伝領域の効果の検証を行った。行動実験を行ったところ、コンソミックマウスは、対照となるB６系統と比較して、従順性が有意に上昇した。このため、MSM系統の１１番染色体をもつ場合、対照群と比較して従順性が高くなることがわかった。また、前年度に行ったイヌとの比較ゲノム解析の追加実験として、マウスの候補領域内にイヌで選択圧を受けた相同領域がどの程度の確率で重なるかをシミュレーションによって明らかにした。さらに、ゲノム全体の遺伝子の発現量の変化を選択群と対照群で比較するため、RNA-seqのためのサンプリングおよび実験を行った。現在、取得したRNAのデータの解析を行っているところである。さらに、これまでの選択交配の結果と、先行研究をベースとして、従順性行動のより詳細な解析を行った。その結果、従順性には雌雄差は見られなかった。また、多変量解析を応用することで、従順性における２つの要素である、能動的従順性と受動的従順性の関係を定量した。解析の結果、能動的従順性の値によって、平均して受動的従順性の１７％が説明できることを明らかにした。この結果は、能動的従順性と受動的従順性の共通した遺伝的基盤が存在することを示唆している。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に実施したシミュレーションを用いた解析系では、まず、8系統の野生由来マウス系統を混合させたヘテロジニアス集団（WHS）を用いて従順性行動に対する選択交配を行った。選択交配により、WHSの集団内の従順性が上昇するに伴い、関連遺伝子座のアリルの頻度が上昇すると期待される。本解析系では、アリル頻度の上昇が意味のあるものかどうかを検定するために、コンピュータシミュレーションによる閾値を設定し、実際に観察されたデータにおいて、その閾値を超えるまで頻度が上昇した遺伝子座を検出することで、従順性に関わる候補遺伝子座を特定した。昨年度では、親の8系統と選択8世代目までの選択交配を実施した。また、当該世代の遺伝的多型をGigaMUGAと呼ばれるSNPアレイによって、および選択8世代目までの家系情報をもとにコンピュータシミュレーションを行い、頻度の上昇に対する閾値を設定した。
この観察値と比較した結果、１１番染色体上の一つのSNPが閾値を超えていた。また、当該SNPの付近についてハプロタイプを調べたところ、親系統のひとつであるMSM系統に特異的なハプロタイプが、約52Mbの大きさで頻度が上昇していた領域（ATR）を同定した。ATRは、マウスの行動に影響しうる遺伝子が複数存在しており、さらに、ATRのイヌにおけるシンテニック領域では、イヌの家畜化で選択を受けたとされる領域が含まれていた。この領域にはイヌの攻撃性に関与しうる遺伝子も含まれていたため、これらの結果から、従順性に関わる分子メカニズムが種間で共有している可能性が示された。
本年度と最終年度に実施予定だったRNA-seqを用いた解析は、サンプルの準備段階が若干遅れたため、データ解析を実施することができなかった。この解析は最終年度に実施予定である。
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| 今後の研究の推進方策 |
最終年度では、学術論文への論文受理とRNA-seqのデータを詳細な解析を進める。前者に関しては、すでに論文を投稿中であり、一回目のリビジョンの修正が終わり、再投稿している。また、従順性の行動の定量に関する論文についても、投稿に向けて準備を進めている。
後者に関しては、昨年度得られたRNA-seqのデータを用いて詳細に解析することで、従順性行動に関する遺伝子および遺伝子ネットワークの全体像を明らかにすることを目指す。主に、以下の2つの点に関して研究を進める予定である。
①従順性に関わる遺伝子の同定：RNA-seqのデータ解析から、対照群と選択群の間で発現量が変化している遺伝子発現を明らかにする。
②従順性の遺伝子間ネットワークの解明：選択群および非選択群におけるRNA-seq解析により、従順性に関わる遺伝子間の相互作用に対して、選択および対照群の間の違いを明らかにする。
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