本年度は、研究課題に関して以下の研究を報告した。 【仕事量を等しくした伸張性および短縮性トレーニングに伴う神経系および骨格筋の適応】 成人男性12名が、片脚を伸張性脚、もう一方を短縮性脚として、膝関節伸展筋群のトレーニングを10週間実施した。両条件とも、180°/秒の速度で最大努力による力発揮を行った。先にトレーニングする脚は、1セットあたり10回反復を6セット実施し、もう一方の脚は、1セットあたりの仕事量が先に行った脚のそれと同じになるまで反復を行った。トレーニング中の最大トルクに加え、筋電図による主働筋の筋活動の測定、ならびにMRIによる筋横断面積と横緩和時間(T2:浮腫を反映)の測定を、トレーニング前後(プレ・ポスト)およびトレーニング期間を通して毎週実施した。トレーニング条件(伸張性脚は伸張性条件、短縮性脚は短縮性条件)における最大トルクおよび筋活動は、両脚ともにそれぞれ1および4週目でプレよりも有意に増加し、その度合いは伸張性脚が短縮性脚よりも有意に大きかった(ポストにおけるプレからの変化:トルク+75% vs +28%、筋活動+73% vs +20%)。筋横断面積は、伸張性脚でのみ4週目以降でプレよりも有意に増加した(ポスト:+4%)。T2値は、両脚ともにトレーニング期間およびポストにかけてプレからの有意な変化はなかった。重回帰分析の結果、トレーニング期間およびポストにかけてのトルクの変化は筋活動の変化で大部分が説明され(伸張性脚:53-80%、短縮性脚:30-56%)、筋横断面積の変化の貢献度は両脚で小さかった(13-18%)。これらの結果から、たとえ仕事量を等しくしたとしても、伸張性トレーニングは短縮性トレーニングよりも大きな神経系および骨格筋の変化をもたらすこと、また、トレーニング初期における筋力の変化の大部分は神経系の変化に起因することが明らかとなった。
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