(1)運動学習中の瞳孔径変動を説明する計算モデルの検討:前年度に得られた実験データ(28人分)の解析から、運動中の瞳孔径の変動パターンは複数の成分によって表現される可能性を示す結果を得た。計算モデルによる検討から、この複数の成分がそれぞれ異なった情報(外乱の大きさ、環境の変わりやすさ等)を表現する可能性を示唆する結果を得た。これを検証するために、様々な条件でシミュレーションを行い、予想される瞳孔径の振る舞いを検討し、複数の成分を最もよく分離可能な課題を探索的に検討した。 (2)運動学習中の瞳孔径測定実験:モデルから予測された瞳孔径の振る舞いについて、同一の課題条件で検証を行った。現在までに30人分のデータを取得しており、予備解析の結果、前年度に得られていた主要な結果が再現されていることを確認した。さらなるデータ取得およびモデル予測との整合性の検討に関しては今後の課題となる。 (3)運動課題遂行中の脳機能画像計測および多変量fMRI解析手法の開発:前年度に引き続き共同で開発を行っていた多変量fMRI解析手法を、MATLABツールボックスとして一般に公開した他、解説論文を出版した。また同手法を用いた研究論文が出版された。 (4)まとめおよび今後の展望:本研究計画の遂行を通して、「運動制御・学習におけるノルアドレナリンの役割」を明らかにする上で重要な基礎的知見を得ることができた。得られた知見は速やかに論文としてまとめる予定である。尚、取得したデータの取り扱いについては、個人情報・プライバシーへの配慮のもとに適切な管理・運用に努めた。今後もこの課題に対して可能な限り継続した研究を続けていく予定である。
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