研究課題/領域番号 |
15J03260
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中司 寛子 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / エピジェネティクス / 自己免疫疾患 |
研究実績の概要 |
I. Tet欠損マウスの作製と表現型の解析 (1) T細胞特異的Tet2/3両欠損マウス(CD4CreDKO)の作製、解析を行ったところ、CD4CreDKOマウスは早期(生後75日前後)に死亡することがわかった。このCD4CreDKOマウスはT細胞の活性化を伴う二次リンパ節腫大を引き起こし、さらに抗体産生に関与するgerminal center B細胞の増加および抗体産生亢進が認められた。 (2) Treg特異的Tet2/3両欠損マウス(Foxp3CreDKO)の作製、解析を行ったところ、Foxp3CreDKOマウスはCD4CreDKOマウスと比べると長寿だが、平均して生後150日程度で死亡することがわかった。Foxp3CreDKOマウスも高齢(5カ月齢以上)になるとCD4CreDKOマウスと同様にT細胞の活性化を伴う二次リンパ節腫大を引き起こし、germinal center B細胞の増加および抗体産生亢進が認められた。また、Foxp3CreDKOマウスから単離したTregを解析したところ、WT Tregに比してTet2/3欠損TregはTSDRの部分的メチル化、および脱メチル化の指標である5hmCの減少が認められ、TregにおいてTet2/3がTSDRの脱メチル化に関与することが明らかとなった。 II. TSDR特異的人工脱メチル化酵素の作製 CRISPR/dCas9システムを用いたCRISPR/dCas9-Tet発現ベクターの作製を試みた。その結果、CRISPR/dCas9-Tetを導入した細胞のTSDR脱メチル化に成功した。しかしながら、Tetは分子量が非常に大きく、ベクターを細胞へ導入することが困難であり、Tregの機能評価を行うまでには至らなかったため、ベクターの導入効率向上を2年目の課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画は、一年度目に「I. Tet欠損マウスの作製と表現型の解析」として、T細胞特異的(CD4Cre)およびTreg特異的(Foxp3Cre)Tet2/3欠損マウスを作製、nTregの発生/誘導および機能におけるTetの関与を明らかにすること、自然発症する病態の解析を計画していたが、計画していた解析はほぼ終了し、さらに二年度目に予定していたTSDRのDNA脱メチル化におけるTet2およびTet3の関与を明らかにすることができた。また「II. TSDR特異的人工脱メチル化酵素の作製」としてTSDR特異的人工脱メチル化酵素発現ベクターを作製、安定化Tregを誘導する方法論を確立することを目標としていたがこちらは計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
I. Tet欠損マウスの解析とTet欠損Tregの機能解析 (1) T細胞及びTreg特異的Tet欠損マウスを用いて免疫疾患モデルを作製し、病態におけるTetの関与を明らかにする。このときエフェクターT細胞とTregの性質を調べる。特にTSDRの脱メチル化状態やFoxp3を始めとするTreg関連遺伝子の発現を検討する。 (2) Tet欠損マウスよりTreg細胞を分離しRag欠損マウスに移入し、Foxp3の安定性を調べる。 II. TSDR特異的人工脱メチル化酵素の作製 引き続きCRISPR/dCas9-Tet発現ベクターの作製を行い、安定化Tregを誘導する方法を確立する。 TSDR特異的人工脱メチル化酵素を導入したT細胞のTSDRメチル化状態やFoxp3発現を検討し、さらに、作製したTet導入Treg細胞をRagマウスに移入して安定性を調べる。
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