研究課題
I. T細胞特異的Tet2/3欠損マウスの解析1年目までにT細胞特異的Tet2/3両欠損マウス(DKO)はT、B細胞の活性化を伴う二次リンパ節腫大を引き起こし早期に死亡することが明らかとなったが、離乳後(3週齢)より抗生物質を投与すると病態発症を抑えられたことから、腸管での常在細菌によるTCR刺激が引き金となっていることが示唆された。また、in vitroもしくはTCRを制限したRag2-/-OT-IITgマウスにOVAを投与するin vivoの実験系においてヘルパーT細胞の分化実験を行ったところ、Tet2/3欠損T細胞はIL-17を産生し、RORγtを発現するTh17型およびPD-1、CXCR5、ICOSを発現するTfh型に分化しやすく、抑制性のTregには分化しにくいことが明らかとなった。II. Tet2/3欠損Tregの機能解析Tregの安定性および機能を解析するために、炎症性疾患やリンパ球減少性のマウスへのTreg移入実験を行った。Treg特異的Tet2/3両欠損マウス(FDKO)より単離したTet2/3欠損Tregは、野生型Tregに比してFoxp3の発現を失いやすく、不安定であることが明らかとなった。また、Tet2/3欠損TregはFoxp3の発現を失った後、IL-17を産生するTh17型のexFoxp3細胞になりやすいことがわかった。さらに、炎症性腸疾患モデルマウスを用いてTregの機能解析を行ったところ、野生型Tregは腸炎を抑制したのに対し、Tet2/3欠損Tregは腸炎を抑制できず、Tet2/3はTregの抑制能の発現にも重要であることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
DNA脱メチル化酵素Tet2/3の欠損マウスの解析を行い、Th17が異常に増加する等非常に興味深い表現型を見出している。おそらく腸内細菌に依存したTCR刺激がT細胞増殖に必要であることをTCRトランスジェニックマウスとの交配で明らかにしている。また誘導性Treg(pTreg)の発生にもTetが必須の役割を果たすことを見出し、計画していた解析はほぼ終了した。また、3年目に計画していた安定化Tregを用いた免疫疾患治療への基盤研究についてもすでに検討を進めている。3年目はさらに、ゲノムワイドのメチル化解析等でターゲット遺伝子を同定することでTregにおけるDNA脱メチル化の意義が明らかにされることが期待される。
I. T細胞におけるTetの機能解明Tet2/3欠損T細胞がTh17細胞あるいはTfh細胞に選択的に分化するメカニズムを解明することで、ヘルパーT細胞分化を制御する新たなエピジェネテック機構を明らかにする。そのために、CD4DKOマウスの遺伝子解析からTetの標的遺伝子を見つけ、T細胞の異常な増殖分化を誘導するサイトカインおよび転写因子を明らかにする。II. 制御性T細胞におけるTetの機能解明Tet2/3欠損Tregが不安定化しexFoxp3に転換するメカニズムを明らかにする。またTet2/3に依存しないDNA脱メチル化の機構を解明する。そのために、FDKOマウスを解析し、TregとTh17の分化制御にかかわる遺伝子の発現レベルを調べ、候補遺伝子のノックダウンや欠損マウスとの交配によって重要な遺伝子を明らかにする。
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