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2015 年度 実績報告書

自律型微生物マイクロロボットの開発

研究課題

研究課題/領域番号 15J03262
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

東 和彦  慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2018-03-31
キーワード微細加工 / ハイドロゲル / ナノファイバー / 微生物 / マイクロ流体
研究実績の概要

これまでの研究において,バクテリアセルロース(BC)から微細構造体を製作するためのプロセスを開発していたが,一度の生産プロセスで得られる微細構造体の数が少なく,また収率も低かったため,より効率よく大量に微細構造体を製作するための技術が必要となった.そこで,新たな加工プロセスを開発した.本方法では,まずBC生成細菌を含有したゼラチン溶液とコーン油を用いてw/oエマルションを作製する.このゼラチン溶液を冷却してゲル化させた後,アルギン酸カルシウムゲル内にトラップし,室温に戻すことでゼラチンをゾル状態に戻す.これにより,アルギン酸カルシウムゲル内部に球状の空隙が形成され,ここでBC生成細菌がBCを生成することで空隙と同形状のBC微小球を得ることができる.運動性細菌を固定する微細構造体のサイズは,自律型微生物マイクロロボットの性能に大きな影響を及ぼす.また,マイクロロボットを使用する環境に応じて,微細構造体のサイズを変更できることが好ましいと考えられる.したがって,微細構造体のサイズを高精度にコントロールできる必要がある.そこで,エマルションを作製する方法として,単分散なエマルションが得られるマイクロ流体技術を用い,各パラメータがゼラチン微小球のサイズに及ぼす影響を調べた.用いたマイクロ流体法としては, Annaらによって開発されたFlow-Focusing法を選んだ(Anna SL et al., Appl. Phys. Lett. 2003).本プロセスにおいて流速および流路サイズが液滴サイズに及ぼす影響を実験的に評価した.その結果,連続相流体の体積流量を増加させるにしたがい液滴サイズが指数関数的に減少することがわかった.また,この体積流量-液滴サイズ曲線は流路サイズの減少にともなって,液滴サイズの減少方向にシフトすることが確認された.これらの結果を用いることで,均一な球径を有するBC微小球を所望の大きさで大量に生成することができる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究では,運動性細菌を固定するための微細構造体を必要とするが,ナノファイバ材料から微細構造体を作製する技術は少ない.例えば,ナノファイバ材料の製作に一般的に用いられている電界紡糸法は,原理的に膜状の構造しか作製できない.ただし,SU-8などのフォトレジストを電界紡糸して得た膜にフォトマスクを用いて露光,現像することで微細構造を作製することはできる.しかし,この場合も製作プロセスが煩雑な上に生産性が著しく低い.これまでに開発したBC微細構造体の製作プロセスも,同様の問題を抱えていた.そこで,初年度はこの問題を克服する新たな製作プロセスの開発に注力することとした.これにより,当初の研究計画から一歩後退する形とはなったが,新規製作法により生産性は飛躍的に向上したため,結果的には今後の研究効率を大きく高めるものと考えている.

今後の研究の推進方策

まず,運動性細菌の固定状態を解析する方法を確立する.これには,蛍光染色法を用いる予定である.なお,蛍光染色方法の候補としてはNanoOrange (Invitrogen)や免疫蛍光染色法が挙げられる.NanoOrangeは,タンパク質の親水性部分と結合することで蛍光活性を示すようになるため,運動する細菌のべん毛を可視化することが可能である.次に,磁性細菌を用いて微細構造体へ磁性細菌を指向的に固定する.磁性細菌とは,直鎖状の磁性粒子を細胞体内に有する細菌のことを指し,この磁性粒子が磁界方向を向くことで,細菌も磁界方向へ遊泳する.この性質を利用することで,磁界に沿って,磁性細菌をBC微細構造体へ固定することが可能であると考えている.運動性細菌の固定方向を一致させることができれば,従来研究よりも効率的に微細構造体へ力を加えることができ,運動速度の飛躍的な向上が予想される.この際,球状のBC微細構造体をまずマイクロアレイデバイスに固定する.マイクロアレイデバイスとは,リポソームなど球状の物体を配列的に固定するマイクロ流体デバイスで,典型的な例としては半円状の微細構造に対象物をトラップする.これにより,磁性細菌が指向的に固定されるものと考えられる.さらに,これにより製作したマイクロロボットを磁界によって運動制御する.この実験のため,定量的な刺激強度勾配が生成でき,顕微鏡下で観察可能なマイクロ流体システムを構築し,製作した微生物マイクロロボットの挙動を評価する.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] 微細構造を有するナノファイバ材料薄膜の製作2015

    • 著者名/発表者名
      東和彦,三木則尚
    • 学会等名
      第32回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム
    • 発表場所
      朱鷺メッセ(新潟県新潟市中央区万代島)
    • 年月日
      2015-10-27 – 2015-10-30
  • [学会発表] Toad’s Egg-Like Cultivation Process for Forming Microcarriers from Nanofibrous Hydrogel2015

    • 著者名/発表者名
      東和彦,三木則尚
    • 学会等名
      37TH ANNUAL INTERNATIONAL CONFERENCE OF THE IEEE Engineering in Medicine and Biology Society
    • 発表場所
      Milan (Italy)
    • 年月日
      2015-08-25 – 2015-08-29
    • 国際学会

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公開日: 2016-12-27  

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