研究課題/領域番号 |
15J03325
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
新上 雄司 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | LysoPS / GPCR / 免疫 / 胚中心B細胞 |
研究実績の概要 |
当研究室では、リゾホスファチジルセリン(LysoPS)に特異的に応答するGα13共役型受容体として、LPS2/P2Y10、LPS2L/A630033H20Rik、LPS3/GPR174を同定した。これら3つのLysoPS受容体は、非常に酷似した性質を示すことから相補的に機能する可能性が考えられた。採用1年目では受容体複数欠損マウスを作製し、3つの受容体の発現が最も高いB細胞の機能に着目した解析を行った結果、LPS2/2L DKOマウス、LPS2/2L/3 TKOマウスで抗原投与時の抗体産生が有意に上昇するという結果が得られた。そこで採用2年目では、新規LysoPS受容体の抗体産生抑制作用メカニズムを解析した。B細胞特異的Gα13 KOマウスは、抗体産生細胞の前駆細胞である胚中心B細胞が異常増加することが報告されている。新規LysoPS受容体は、共通してB細胞に発現が高く、Gα13に共役することから、胚中心B細胞の数を負に制御することを想定した。各受容体KOマウスに抗原投与し、リンパ節中の胚中心B細胞の数を調べると、LPS2 KOマウスで有意な増加が認められたが、LPS2/2L DKOマウス、LPS2/2L/3 TKOマウスでより顕著な異常が認められた。また、胚中心B細胞が異常増加するという観点から、その増殖性・アポトーシスを調べた。LPS2/2L DKOマウス、LPS2/2L/3 TKOマウスとWTマウスの胚中心B細胞の増殖性に有意な差は認められなかったのに対し、アポトーシスした胚中心B細胞の割合が有意に低下していた。このことから、新規LysoPS受容体が胚中心B細胞のアポトーシスを促進し、その数を負に制御した結果、抗体産生細胞数を減少させるという作用メカニズムが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況としては、「おおむね順調に進展している」。理由として、採用2年目の目標であった「LysoPS受容体の抗体産生抑制メカニズムの解析」を個体レベルで検証し、新規LysoPS受容体が胚中心B細胞のアポトーシスを促進し、その数を負に制御することを明らかにしたことが挙げられる。「当初の計画以上に進展している」を選択しなかった理由として、細胞レベルでの解析が不十分であり、新規LysoPS受容体がどのように胚中心B細胞のアポトーシスを誘導しているのか実験的に証明できなかった点が挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新規LysoPS受容体がどのように胚中心B細胞のアポトーシスを誘導しているのか細胞レベルで解析する予定である。現在までの細胞レベルの解析では、新規LysoPSが活性化B細胞の接着性を低下させるという結果が得られている。胚中心B細胞は、CD4 T cellや樹状細胞細胞と接着・相互作用し、生存シグナルを送られることが知られている。このような知見から新規LysoPS受容体が胚中心B細胞と他の細胞との接着・相互作用を低下させ、生存シグナルが減弱した結果、アポトーシスが誘導されることを想定している。この仮説を検証するために、活性化B細胞とT細胞や樹状細胞を共培養し、LysoPS添加時にアポトーシスが誘導されるか調べる予定である。また、胚中心B細胞は増殖過程でBCRに変異が生じ、抗原に対する親和性が変化する。LPS2/2L DKOマウス、LPS2/2L/3 TKOマウスで異常増加した胚中心B細胞がどのようなBCRを有するか解析する予定である。さらに、胚中心B細胞の異常増加は、アレルギーやSLE等の自己免疫疾患の症状の増悪に繋がることが知られており、自己免疫疾患の一種であるSLEモデルマウスを用いて、病態時の解析を進行中である。
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