研究課題
本年度は,当初の実験計画に従い,達成目標が検索誘導性忘却に及ぼす影響について昨年度実施した実験の追試を行った。具体的な手続きは以下の通りである。まず参加者に対して達成目標の教示を行った。具体的には,習得目標条件では「課題を通じて自分自身の認知能力を向上させる」ことが目標とし,遂行目標条件では「他の人よりも課題で優れた成績を獲得し優れた記憶能力を示す」ことを目標とするよう教示した。その後,実験参加者はカテゴリー-事例ペアの学習を行った。学習段階の後,一部のカテゴリー内の半分ペアについて検索経験を行わせた。検索経験後,半分のカテゴリー-事例ペアに対して再生テストが実施した。最後に,1日の遅延時間を置き,残りの半分のペアに対して再生テストを実施した。なお,本実験に関しては検定力分析に基づき参加者数を決定していたが,予定の参加者数を確保できておらず,データの分析は参加者を予定数募集した後に実施する予定である。また,昨年度の研究から,達成目標や解釈レベルと符号化の関係性についてより詳細な検討が必要であることが明らかとなったため,本年度は特に解釈レベルと符号化の関係性について検討する実験を新たに実施した。仮説としては低次解釈で項目特定性処理が優勢になり,高次解釈では関連性処理が優勢になると想定していたが,実験の結果,このような仮説とは一致しない結果が得られた。そのため,Ikeda et al. (2016) で想定していた解釈レベルと符号化の関係性について別の枠組みから捉え直す必要があることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本年度は,当初の研究計画に従い,達成目標が検索誘導性忘却・促進に及ぼす影響に関する追試実験を予定通り実施した。ただし,昨年度得られた結果から,達成目標や解釈レベルと符号化の関係性について,再度詳細な検討を行う必要があることが明らかとなっていた。そこで,本年度は特に解釈レベルと符号化の関係性について検討する実験を実施した。これらの点から,本年度は一定の研究成果を得ることができており,おおむね順調に研究は進展しているものといえる。
達成目標と検索誘導性忘却・促進に関しては,単純な課題だけではなく文章といったより複雑な課題での結果の再現性を確認する必要がある。また,本年度の研究から,解釈レベルと符号化に関しては,先行研究とは不一致な結果が得られた。そのため,解釈レベルと検索誘導性忘却・促進の関係性を検討する前段階として,解釈レベルと符号化の関係性に関してより詳細な検討が必要となる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Aging, Neuropsychology and Cognition
巻: 24 ページ: 216-226
10.1080/13825585.2016.1182114.
Motivation Science
巻: 2 ページ: 199-219
http://dx.doi.org/10.1037/mot0000047
パーソナリティ研究
巻: 25 ページ: 62-73
http://doi.org/10.2132/personality.25.62