研究課題
好中球の遊走には、ATPなどのヌクレオチドを情報伝達物質とするプリン作動性化学伝達が重要である。走化性因子を受容した好中球は、好中球自らが放出するATPやその分解産物であるアデノシンによってオートクライン的に遊走を制御していることが、プリン受容体欠損マウスを用いた研究より明らかとなった。しかし、ATP放出機構についての研究は少なく、詳細は不明であった。小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)は、ATPの小胞内蓄積や放出に関与するトランスポーターであり、VNUTに着目することで、ATPがいつ・どこから・どのように放出されるか解析できる。私は、VNUTによってATPが好中球の分泌性オルガネラに蓄積され、開口放出されているのではないかと考え、実証を試みた。以下の項目について、明らかにした。1、ヒトの末梢血から単離した好中球において、VNUTは三次顆粒に局在している。 2、VNUTはヒト前骨髄球性白血病細胞株であるHL-60細胞からのATP放出に関与している。3、マウス骨髄由来の好中球においても、VNUTが三次顆粒に局在している。 4、VNUTノックアウトマウスの好中球では、ATP放出と遊走能が低下している。 5、VNUT阻害剤により、好中球の遊走能が低下する。現在、VNUTノックアウトマウスを用いて疾患モデルを作製し、in vivoにおける解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
本研究より、VNUTが好中球の三次顆粒に局在し、ATP放出や遊走に関与していると結論し、現在、論文投稿準備中である。また、VNUTノックアウトマウスを用いたin vivoにおける解析を進めるための実験系を確立しており、研究はおおむね順調に進展していると言える。
個体レベルでVNUTが好中球の遊走に関与していることを調べるため、VNUTノックアウトマウスを用いて疾患モデルマウスを作製し、解析する。また、新たに発見したVNUT阻害剤が好中球からのATP放出や遊走能に与える影響を調べる。
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The Journal of Biological Chemistry
巻: 292(9) ページ: 3909-3918
10.1074/jbc.M116.756197
http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id442.html