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2015 年度 実績報告書

心血管病発症危険因子ホモシステインの新規作用機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15J03367
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

鎌田 祥太郎  慶應義塾大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2017-03-31
キーワードPPARα / Homocysteine
研究実績の概要

ホモシステイン(Hcy)の血中濃度上昇は、心血管病発症の独立危険因子として認識されているが、その機序については未だ不明である。これまでの解析により、私はHcy代謝酵素であるCystathionine β-synthase(CBS)欠損マウスの肝臓(脂肪肝)における脂質代謝の主要転写因子Peroxisome proliferator-activated receptor alpha (PPARα)の活性が低下すること、またTR-FRETアッセイによりホモシスチンによりPPARαとコアクチベーターの会合が阻害されることを見出し、新規Hcy標的として注目している。本研究課題ではその結合様式を明らかにすることを目指しているが、本年度は下記の4アプローチによりその課題に迫った。
①Biacoreによる分子間相互作用解析を行い、TR-FRET結果の再現に成功した。さらに、自分で立ち上げた新規TR-FRETシステムにおいてもホモシスチンの阻害効果を確認した。
②コンピュータシュミレーションから推定される結合関与部位のアミノ酸の点変異体を作成したが、変異に基づくホモシスチン結合能の変化は確認できなかった。
③ホモシスチンによるPPARα活性化阻害を細胞レベルで調べるため、HepG2細胞に3xPPREの下流にルシフェラーゼ酵素遺伝子を有するプラスミドを遺伝子導入・発現させ、アゴニストとホモシステインを添加後のルシフェラーゼ酵素活性測定を行った。しかし、ホモシステイン刺激により細胞死が起こる、などの理由によりうまくいかなかった。
④フェノフィブレート餌及びメチオニン餌を作成し、野生型及びCBSヘテロ欠損マウスに与え、食餌性高ホモシステイン結晶誘導時のPPAR活性に対する影響を調べた。メチオニン餌投与によりPPARα活性の若干の低下は見られたものの、血中ホモシステイン濃度に対応した変化ではなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

順調に進んでおり、主に時間を費やしている①について説明する。まずヒトPPARα全長タンパク質を大腸菌により発現させ、センサーチップSAにコアクチベーターペプチドであるPGC1αを固定し、そこへhPPARαタンパク質とアゴニストあるいはアンタゴニストを流し、レスポンス変化を観察した。すると、アゴニスト添加時に相互作用の増大が観察され、そこにホモシスチンあるいはシスチンを共存させるとその増大が抑えられた。しかし、この条件ではチップの再生がうまくいかず、同チップで再現性を確認することはできなかった。
一方、hPPARαタンパク質をセンサーチップCM5に固定し、アゴニストやホモシスチンを流す実験では、レスポンスを確認できなかった。研究を進めていく中で、実はhPPARαの全長タンパクは非常に安定性が低く、チップ固定時に活性を失うことが判明した。また、hPPARα全長タンパク質とPGC1αペプチドを用いてTR-FRETによる相互作用検出を試みたが、DTT共存無での測定が難しく、これも安定性が課題となった。
そこで、共同研究者である山梨大学の大山拓次准教授にhPPARα-LBDプラスミドとその発現、精製方法について御教授頂き、この精製hPPARα-LBDタンパク質を用いて、Biacore、そしてTR-FERT実験を再度試みた。その結果、Biacoreでのチップ再生能が大きく改善し、それによりデータ再現性が向上した。また、TR-FRETでもDTT共存無でデータが得られるようになり、ホモシスチン阻害効果も確認できた。

今後の研究の推進方策

まずhPPARαとホモシスチンの共結晶化により結合部位と阻害様式の同定を行う。結晶化に必要なタンパクの精製方法、結晶化の方法については、既に大山准教授に御教授頂いている。まず、一般アゴニスト共存下で精製したhPPARα-LBDが結晶化グレードであることを確認後、ホモシスチンとの共結晶化を目指す。適当な結晶が得られ次第、X線結晶構造解析を行う。
また、LC-MS/MSを用いて組織中ホモシスチン/シスチン/GSSGを定量し、CBS欠損マウスの肝臓においてもPPARαとCoactivatorの会合がホモシスチンにより阻害されうる濃度であるか検討する。PPARαシグナリングに影響を与えうるホモシスチン/シスチン濃度がCBS欠損マウスあるいはCTH欠損マウスの肝臓で存在しうるかを検討する。血中総Hcy濃度はCBS欠損マウスとCTH欠損マウスではほぼ同等(180 μM)であるが、組織中における濃度は不明である。我々が通常用いている蛍光アミノ酸ラベルHPLC法による測定では、低濃度のこれらジアミノ酸の定量には至っていないが、今後はより高感度のLC-MS/MSを用いて定量する。
さらに、血管組織やマクロファージなどを用いてPPAR阻害と動脈硬化との関連を明らかにする実験を開始する。PPARγアゴニスト投与により、マクロファージPPARγが活性化され、動脈硬化進展が軽減されるという既報があり、ホモシスチンによりPPARγが阻害されることで動脈硬化を悪化させる可能性について検証する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Blockade of Sphingosine 1-Phosphate Receptor 2 Signaling Attenuates High-Fat Diet-Induced Adipocyte Hypertrophy and Systemic Glucose Intolerance in Mice2016

    • 著者名/発表者名
      Kitada Y, Kajita K, Taguchi K, Mori I, Yamauchi M, Ikeda T, Kawashima M, Asano M, Kajita T, Ishizuka T, Banno Y, Kojima I, Chun J, Kamata S, Ishii I, Morita H.
    • 雑誌名

      Endocrinology

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1210/en.2015-1768

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Protective effects of hydrogen sulfide anions against acetaminophen-induced hepatotoxicity in mice2015

    • 著者名/発表者名
      Ishii I, Kamata S, Hagiya Y, Abiko Y, Kasahara T, Kumagai Y.
    • 雑誌名

      J Toxicol Sci

      巻: 40 ページ: 837-841

    • DOI

      10.2131/jts.40.837

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Formation of sulfur adducts of N-acetyl-p-benzoquinoneimine, an electrophilic metabolite of acetaminophen in vivo: participation of reactive persulfides2015

    • 著者名/発表者名
      Abiko Y, Ishii I, Kamata S, Tsuchiya Y, Watanabe Y, Ihara H, Akaike T, Kumagai Y.
    • 雑誌名

      Chem Res Toxicol

      巻: 28 ページ: 1796-1802

    • DOI

      10.1021/acs.chemrestox.5b00245

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 2D DIGE proteomic analysis highlights delayed postnatal repression of α-fetoprotein expression in homocystinuria model mice2015

    • 著者名/発表者名
      Kamata S, Akahoshi N, Ishii I.
    • 雑誌名

      FEBS Open Bio

      巻: 5 ページ: 535-541

    • DOI

      10.1016/j.fob.2015.06.008

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Differential adaptive responses to 1- or 2-day fasting in various mouse tissues revealed by quantitative PCR analysis2015

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto J, Kamata S, Miura A, Nagata T, Kainuma R, Ishii I.
    • 雑誌名

      FEBS Open Bio

      巻: 5 ページ: 357-368

    • DOI

      10.1016/j.fob.2015.04.012

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Hyperhomocysteinemia abrogates fasting-induced cardioprotection against ischemia/reperfusion by limiting bioavailability of hydrogen sulfide anions2015

    • 著者名/発表者名
      Nakano S, Ishii I, Shinmura K, Tamaki K, Hishiki T, Akahoshi N, Ida T, Nakanishi T, Kamata S, Kumagai Y, Akaike T, Fukuda K, Sano M, Suematsu M.
    • 雑誌名

      J Mol Med (Berl)

      巻: 93 ページ: 879-889

    • DOI

      10.1007/s00109-015-1271-5

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Dietary deprivation of each essential amino acid induces differential systemic adaptive responses in mice2016

    • 著者名/発表者名
      Shotaro Kamata, Junya Yamamoto, Katsuhito Karube, Rika Ohkubo, Tadashi Kasahara, and Isao Ishii
    • 学会等名
      Experimental Biology 2016
    • 発表場所
      San Diego Convention Center (San Diego, California, USA)
    • 年月日
      2016-04-04 – 2016-04-04
    • 国際学会
  • [学会発表] 絶食によるマウス臓器タンパク質リモデリングの網羅的プロテオーム解析2015

    • 著者名/発表者名
      鎌田 祥太郎
    • 学会等名
      第88回生化学会
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド (兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2015-12-02 – 2015-12-02
  • [学会発表] 短期絶食によるマウス全身性応答1(臓器別遺伝子発現変化)2015

    • 著者名/発表者名
      鎌田 祥太郎
    • 学会等名
      第59回日本薬学会関東支部大会
    • 発表場所
      日本大学薬学部 (千葉県船橋市)
    • 年月日
      2015-09-12 – 2015-09-12
  • [学会発表] 高ホモシステイン血症マウスにおける血中α-fetoprotein蓄積2015

    • 著者名/発表者名
      鎌田 祥太郎
    • 学会等名
      第16回Pharmaco-Hematologyシンポジウム
    • 発表場所
      日本薬学会 長井記念ホール (東京都渋谷区)
    • 年月日
      2015-06-13 – 2015-06-13

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公開日: 2016-12-27  

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