研究課題/領域番号 |
15J03437
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
藤原 泰央 千葉大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | シダ植物 / 倍数体 / 種分化 / 雑種形成 / 隠蔽種 |
研究実績の概要 |
本研究は、倍数体種において複数回起源で生じた系列間で生殖隔離が生じているのかを複数の分類群を用いて検証することを目的としている。 1)フモトシダ:PgiC遺伝子型の決定はおよそ566個体に対して完了した。それぞれの隠蔽種は固有な遺伝子型を示し、他の遺伝子との間に強い相関があることが明らかになるとともに、複数隠蔽種が同所的に分布する集団では遺伝子型の対応から外れる個体が確認され、隠蔽種間には生殖隔離があるものの完全なものではないことが示された。発芽率の調査のため、今まで得られていなかった隠蔽種1×4の自然雑種の探索を行い、1個体の自然雑種を得ることができた。これは来年度以降の実験に用いる予定である。発芽実験に関しては、本年度は雑種に加え、各隠蔽種個体を増やして行ったものの、正確な発芽率の推定ができなかった。 2)ノキシノブ:全国から36集団をサンプリングし、4核遺伝子によって遺伝子型の決定を行った。ベイジアンクラスタリングの結果、紀伊半島を境にして、東日本・西日本間で明確な遺伝的分化が生じていることが確認された。紀伊半島内では東・西日本間系列が混生しているにも関わらず、系列間の組み換えがほとんど生じていないことが示された。さらに東・西日本系列推定雑種は正常個体と比較し、胞子サイズのバラツキが大きいことから、系列間には部分的に隔離が生じていることが示された。核遺伝子の系統解析によって、東・西日本系列が互いに独立起源であることが示された。この結果は学会において発表した。 3)ゲジゲジシダ:本年度はゲジゲジシダ倍数体の起源を明らかにすることを目的とし、サンプリング・倍数性解析・系統解析を行った。結果としてゲジゲジシダ4倍体は、ゲジゲジシダ2倍体に含まれる2種の別種間の異質倍数体であることが示された。しかしながら4倍体内部の遺伝的多様性は全国的に低く、複数回起源からの種分化の可能性は低い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までにフモトシダ類における隠蔽種間雑種胞子の発芽率の計測を完了させる予定であったことと解析候補種であるゲジゲジシダにおいて複数回起源からの種分化の可能性が低いことが見込まれることから本来の計画からは遅れていると考えられる。しかしながら、ノキシノブ倍数体においては、独立起源系列が日本列島の東と西で明確に分化し、部分的な生殖的隔離が示唆されるという結果が得られたことは、ノキシノブ倍数体は両親種がどちらも日本に分布しており、比較的に生株維持も容易であることから今後の研究の発展性があることから、大きな進展があったと考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
1)フモトシダ:発芽率を28年度採取した雑種個体を含めた雑種個体と各隠蔽種において推定する。28年度時には、採取時期・保存方法等に問題があったため、来年度は複数回の胞子採取と採取後迅速に発芽実験を行うことで対策を行う。 2)ノキシノブ:今まで含めていなかった中国・四国でのサンプリングを実施する。紀伊半島での密なサンプリングにより雑種個体を探索し、正常個体との胞子発芽率の比較を行う。また東・西日本系列それぞれにおいて異なる進化プロセスを辿っているのかを検証するために、RNSseqによる発現パターンの比較を行う予定である。 3)ゲジゲジシダ:28年度の結果の理由としては、サンプリング地点が少ないこと、適切な遺伝子マーカーでなかった可能性が考えられる。来年度はサンプリング地点・マーカー数を増やし、解析を行う。
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