研究課題/領域番号 |
15J03490
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
矢崎 啓寿 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | エクソソーム / 電流計測 / 蛍光検出 |
研究実績の概要 |
今年度は、がん細胞由来エクソソームの解析のための光・電流同期計測法の基盤となる微小空間内でのナノメートルサイズ粒子検出及び解析を行った。本研究では、マイクロチップ中の微小流路を粒子計測用構造として用い、導入された粒子の粒子径や蛍光強度などを検出する。直径30 nmから200 nmの幅広い粒径分布を持つがん細胞由来エクソソームの検出及び解析には、粒子検出用構造と同程度の大きさから非常に小さな粒子までを検出することが必須である。このため今年度は、本計測系で得られる情報のうち、電流シグナルから得られる粒子径情報の高感度化とシグナル形状に含まれるその他の粒子情報の解析を行った。フォトリソグラフィーを用いて作製した幅2μm X 高さ2μm X 長さ14μmの構造を用いて、直径200 nmのポリスチレン粒子を検出することに成功した。また、電流シグナルは、ベースラインとなるゼロアンペアの値を始点として、粒子検出用構造にサンプルが入る際と出る際にプラス電流が得られることが分かった。このプラス電流の間隔はサンプルが粒子検出用構造を通過する時間を意味していることが分かった。異なるゼータ電位を持つサンプルを導入して通過時間を解析すると両者が比例関係を持つことが分かった。これにより、電流シグナルから、粒子径の情報だけでなくサンプルの表面の性状も解析することができ、サンプルの情報をより多く取得することが可能となった。さらに今年度は、エクソソームと同様に脂質二重膜を持つサンプルとして細菌を対象に、粒子径、ゼータ電位、蛍光情報などをもとに、生体サンプルを模して夾雑物を含む環境下で対象サンプルの検出と識別に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究で開発した粒子計測技術により、本研究の対象サンプルであるエクソソームと同程度のナノスケール粒子を検出することに成功した。また、本技術により得られたシグナル形状に基づいて、サンプルのサイズだけでなく表面性状の同時解析にも成功した。エクソソームと同様に脂質二重膜を持つ細菌をモデルとした実験では、夾雑物存在下においてもサイズ、表面性状の個体差に基づく識別に成功した。これらの研究成果により、エクソソームの高精度解析を進める上で、より多くの情報を同時に得ることを可能にする基盤技術を構築することに成功したため、研究状況はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究において、マイクロメートルサイズの粒子や細菌を用いることで、サンプルサイズだけでなく様々な情報が電流シグナルに反映されていることが分かった。そこで、次年度は、細菌をモデルサンプルとしてマイクロスケールでの実験を重ね、電流シグナルに含まれるさらなる情報を得ることを目的とする。これにより、ナノメートルサイズの粒子を用いた場合にはシグナルの絶対値が小さなために判別が困難であった僅かな電流値変化を、マイクロメールサイズのサンプルを用いることで大きな電流値変化として検出し、エクソソーム解析を進める上で基礎となる電流シグナル解析理論の構築が可能となると考えられる。
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