研究課題/領域番号 |
15J03498
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
廣田 郷士 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | フランス語圏カリブ海文学 / 黒人文学 / ネグリチュード / 脱植民地化 / クレオール化 / 第三世界 / マルティニック / アンティル諸島 |
研究実績の概要 |
本年度はまず、研究対象の詩人のうちエメ・セゼールの初期の詩作品及び戯曲作品の分析とその周辺作業に従事した。分析の対象に挙げた作品は『帰郷ノート』(1939年初版)から『土地台帳』(1961年)に至る前期詩作品と雑誌『トロピック』(1941-45年)所収の散文、及び戯曲『そして犬どもは黙っていた』(1956年)であり、いずれも30年代から50年代にかけての、カリブ・アフリカ諸地域の脱植民地化へ至るその準備時代におけるテクストである。セゼールの詩学と政治の関わりに焦点をおきながら、作品における時空間描写に注目し分析を進め、その過程で詩集『奇跡の武器』(1946年)とその周辺に現れる過去と未来、主体の生と死の主題の錯綜と両義性に注目し、その分析の成果を学会口頭発表の形で公表した。またセゼールのエクリチュールに現れる「暴力」の契機と詩の政治的側面の関係を明らかにする作業を進めており、その成果は本年5月に開催される国際コロックにて発表予定である。エドゥアール・グリッサンの初期の作品及び活動についても同時に調査を進め、1961年までの彼の詩作品の集中的な読み込みを行うとともに、資料収集の面では大きな成果が得ることができた。特にグリッサンが熱心な政治活動を行っていた1960年前後に発行していた政治組織「アンティーユ・ギアナ戦線」の集会議事録や、グリッサンの同志アルベール・べヴィルの追悼文集などを集められたことは、これまで不明瞭な点が多かった1950年代から60年代にかけてのパリでのグリッサンの文学と政治をめぐる活動についての今後のより詳細な分析に繋がるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ従来の計画どおり、セゼールの詩学についての分析が進められ、またその成果を公表している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、グリッサンの初期詩作品と小説を主たる対象に定めて研究を進めていく。アンティル諸島という土地が生成する詩学という地理的・政治的文脈から出発し、グリッサンの詩学がセゼールのそれからどのような批判的展開を切り開いているか、二人の詩人の間の連続性と断絶という、二つの主軸となる観点から、20世紀のアンティル諸島における仏語文学の生成過程を分析していく。特にグリッサンの作品については、詩作品と小説との対応関係に注意して分析を進めていく。
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