研究実績の概要 |
本研究の目的は、ガドリニウム錯体を用いて、光電気化学セルや二酸化炭素の光還元における変換効率を向上させる、高性能な光増感剤を開発することである。具体的には、ガドリニウム錯体が、光増感剤として重要な次の2つの性質を示すことを期待して研究を進めている。(1)長い励起寿命を有する。(2)化学修飾によって容易に酸化還元電位を制御することができる。 平成27年度は、当初の研究計画に沿って研究を遂行した。先行実験(Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, 8722)の結果をもとに、新たに2種類のガドリニウム錯体を設計・合成し、その構造を調べた。単結晶X線構造解析の結果より、期待していた通り、溶媒分子であるTHF(テトラヒドロフラン)が1分子配位した7配位構造を有するガドリニウム錯体が合成できていることがわかった。また、合成した新規ガドリニウム錯体の「光増感剤」としての基本物性(酸化還元電位、励起エネルギー、励起寿命および量子収率)を明らかにした。 これらの研究を進めている過程で、フェニル基を発光部位とするガドリニウム錯体が、通常観測困難な「空気下・室温・結晶状態」でリン光(励起三重項状態からの発光)を示すことを発見した。この現象は、高輝度な発光デバイスの開発という観点から近年注目集めている。この錯体の結晶状態での光物性を明らかにし、得られた結果を学術論文にまとめた(投稿中)。
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