研究課題/領域番号 |
15J03540
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
平野 雅人 広島大学, 総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 神経科学 / 経頭蓋磁気刺激 / 運動モジュール / 運動学習 / 両手運動 |
研究実績の概要 |
本研究は片手・両手運動という運動形態の違いが新規の運動を学習することによる一次運動野の可塑的変化に及ぼす影響を明らかにすることが目的である。本年度では予定している3つの実験のうち実験1を実施した。当初の計画では、運動課題を片手・両手で学習させる2群に分けて行う予定であった。しかし先行研究において、運動課題を暗黙的に学習するか明示的に学習するかによって一次運動野(M1)の関与が異なると報告されていることから、実験1ではまずその2条件においてM1に表現される運動モジュールが可塑的に再編成されるか明らかにすることに目的を変更し、17名の右利き健常成人を対象に実験を行った。被験者に5本指を用いた系列反応時間課題を暗黙的、または明示的に学習させ、その前後においてTMSでM1を刺激しその誘発運動をデータグローブを用いて記録した。その結果、TMSを用いて誘発した指関節の運動から主成分分析を用いて得られた各指関節の協調関係は、M1に表現されている運動モジュールを表していることが明らかとなった。さらにその運動モジュールは新規の運動を暗黙的に学習することによって可塑的に再編成されることが明らかとなった。 実験1の結果は、M1に運動モジュールが表現されていること、運動モジュールを用いて手の運動が制御されていること、新規の運動を学習することによって課題特異的に再編成されることをヒトにおいて初めて直接的に明らかにした点で、その意義や重要性は非常に高い。実験1の結果を踏まえ、今後は両手運動と運動モジュールの関係について実験2を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はまず新規実験のセットアップとして、データグローブとそのデータ収集システムの開発、系列反応時間課題の作成を行った。その間に並行して本研究に関連する文献を調査したところ、当初予定していた研究計画を一部変更する必要があったため、研究計画を一部見直して実験を行った。しかしながら、本年度中にデータグローブの開発・課題の作成・実験は滞りなく終了し、実験結果は申請者の仮説とも一致するものであったため、一部計画に変更はあったもののこれまでの研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
実験1から、手の運動は運動モジュールを用いて制御されていることが明らかとなった。一方、両手運動の制御に関して運動モジュールに着目した研究はされていない。ヒトの運動制御において右手は左一次運動野(M1)が、左手は右M1がその大部分を担っていることが分かっている。また左右のM1は脳梁を介してお互いに情報のやり取りをしており、半球間抑制に代表されるように片側のM1の活動が反対側のM1の活動に影響を及ぼしていることが明らかとなっている。そこで研究2では片側の運動が反対側の運動モジュールへ与える影響について検討する。 方法:経頭蓋磁気刺激法(TMS)を用いて左M1の手指支配領域を刺激し誘発される右手指関節の運動をデータグローブを用いて記録する。TMS刺激の際、左手で選択反応時間課題を行っている間に刺激する運動条件と、両手ともに安静の状態で、かつ運動条件と同じ視覚刺激を与える安静条件の2条件を設定する。主成分分析を用いて記録された指関節運動から運動モジュールを抽出し、2条件間で比較する。得られた研究成果は国内及び国際学会で発表を行い、さらにこれらの成果を学術論文としてまとめ国際誌へ投稿する予定である。
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備考 |
(1)上達後も繰り返し練習することで運動スキルを保持する能力も高くなる~新しい運動スキルの学習とその保持に大脳皮質運動野が関与していることを解明~ (2)Repetitive body movements may form long-lasting motor memory
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