本年度は、アルツハイマー病治療薬リバスチグミンの認知機能障害改善作用における神経薬理学的基盤の解明を目指し、リバスチグミンの薬理作用発現におけるブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)阻害作用の関与について検討した。 選択的BuChE阻害薬iso-OMPAは、大脳皮質前頭前野の細胞外アセチルコリン量を約3倍程度増加させる用量において、ドパミン受容体アゴニストであるアポモルヒネによるプレパルスインヒビション(PPI)障害を改善した。他のアルツハイマー病治療薬であるドネペジルやガランタミンがアポモルヒネ誘発PPI障害を改善するには、10倍以上の細胞外アセチルコリン量増加作用を示す用量が必要であったことから、iso-OMPAのPPI障害改善作用には、細胞外アセチルコリン量増加作用以外のメカニズムが関与している可能性が考えられた。そこで、iso-OMPAの中枢ムスカリンM1受容体機能に対する作用について検討した結果、ムスカリンM1受容体アゴニストであるN-デスメチルクロザピンによる前頭前野ドパミン遊離の増加が、iso-OMPAの併用により増強された。 これらの結果から、リバスチグミンによる認知機能障害の改善には、そのBuChE阻害作用を介したメカニズムが関与する可能性が示された。
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