研究課題/領域番号 |
15J03597
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村上 知成 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 高次視覚野 / 広域カルシウムイメージング / 視覚経路 / 機能発達 |
研究実績の概要 |
2年目は本研究テーマの1段階目「マウス高次視覚野の機能的な違いが獲得される時期の同定」を行った。霊長類の視覚野において、物の“形”と“動き”に関する視覚情報は、異なる視覚皮質経路によって処理される。近年、マウスの大脳皮質視覚野には9つの高次視覚野が存在し、これらの領野が同様に2つの視覚情報処理経路を構成している可能性が、解剖的手法を用いた研究から示唆された。しかし、これらの経路を構成する高次視覚領野がどのような視覚情報を処理しているのか、まだ完全に解明されていない。そこで、まず成体マウスにおいて、9つあるマウス高次視覚野の、動きと形の情報を含む視覚刺激がどの領野で処理されているのか調べた。 今回は動く速度と格子の幅を様々な組み合わせで変えた格子状刺激に対する視覚応答を、9つの高次視覚領野を含む視覚野全体で同時にカルシウムイメージングを行った。その結果、側頭葉付近に位置する高次視覚領野は“形”に関する視覚情報を、頭頂葉付近に位置する高次視覚野は主に“動き”に関する視覚情報を選択的に処理していることを発見した。この機能的な経路は、過去に報告された解剖学的な経路と一致していた。この結果から、マウス視覚野でも霊長類と同様に、異なる視覚情報はそれぞれ異なる皮質経路で処理されることが示された。 次に、これらの視覚経路の機能がどの段階で獲得されているのかを、マウス幼児が開眼した直後(15日齢)と20、25日齢の3段階で調べた。その結果、開眼直後と20日齢の高次視覚野は視覚応答を示すが、経路の機能的な違いは明瞭に分かれていなかった。しかし、25日齢になると機能的な違いがはっきりと分かれていた。この結果から、マウス視覚経路の機能的な違いは開眼後に次第に獲得されることが明らかとなった。現在、ここまでの結果をまとめ、論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1段階目「マウス高次視覚野の機能的な違いが獲得される時期の同定」については実験結果を得ることができ、論文にまとめて投稿することができた。さらに、受入研究室のメンバーと共同で行った研究「内因性シグナルとカルシウムシグナルの広域同時イメージング法を用いた休息状態におけるマウス大脳皮質の自発活動の観察」をまとめ、論文を発表することができた。 このように、行っている研究においてそれぞれ結果が得られており、順調に進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
1段階目の研究結果から、マウス高次視覚野の機能的な違いが開眼後からの視覚経験により獲得される可能性が示唆され、今後は2段階目の「視覚経験依存的に機能的な違いが獲得される可能性の検証」を引き続き行う予定である。 また、現在は視覚入力が入ってくるよりも前の発達段階において、高次視覚野間の神経結合がどのように形成されるのかを、in vivoイメージングとニューロトレーサーを用いた解剖学的手法を組み合わせて調べている。その実験についても引き続き進めていく予定である。
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