研究課題/領域番号 |
15J03603
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
仲本 宗泰 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
キーワード | 高精度放射線治療 / 放射線治療計画 / 統計的多次元放射線治療症例データベース / EPID画像 / 最適化 / ガンマ解析 |
研究実績の概要 |
本年度は高精度放射線治療計画のため撮像された数多くの症例のcomputed tomography (CT) 画像と治療時に照射ビームを用いて撮像されたelectronic portal imaging device (EPID) 動画像を収集し,治療時の経時的な変動を考慮した患者内外のバリエーションを含む統計的多次元放射線治療症例データベースを構築した. 治療時の患者内外の統計的変動はEPID動画像を基に治療計画CT画像を各位相で変形させることによって予測した.この統計的変動を示す変形パラメーターはLevenberg-Marquardt法を用いて最適化を行った.また,最適化の精度と高速化を図るため最適化のステップにadaptive transformation parameters (ATPs) approach を組み込んだ. 予測した患者内外の統計的変動を評価するため,EPID動画像から推定したEPID検出器面の線量分布動画像と治療時の統計的変動を含んだsimulated “treatment” 4D-CT 画像に線量計算アルゴリズムを適用することにより求めた線量分布動画像との間でガンマ解析のパス率(3 mm/3%)を計算した.また,ATPs approachの有無による結果の比較も行った.ATPs approachを組み込んだ場合,パス率は上昇し最適化ステップでの計算時間が短縮できた.以上より,我々は治療時の患者の統計的変動を高精度に予測可能な手法を開発し,統計的多次元放射線治療症例データベースを効率良く構築できるシステムを提案した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
治療計画CT画像とEPID動画像を用いて治療時の患者の統計的変動を含んだ統計的多次元放射線治療症例データベースを構築した.治療時の患者内外の統計的変動はEPID動画像を基に治療計画CT画像を各位相で線形レジストレーションを用いて変形させることによって予測した.また,統計的多次元放射線治療症例データベースを構築する際に患者の統計的変動を高精度かつ効率よく予測できるATPs approachを提案した.研究成果は1回の国際会議と2回の国内会議で発表し,高い評価を受けた.
|
今後の研究の推進方策 |
構築した放射線治療時の経時的な変動を考慮した患者内外のバリエーションを含む統計的多次元放射線治療症例データベースから多次元計算解剖 (multidimensional computational anatomy: MCA)モデルを作成し,MCAモデルと治療計画時に設定するパラメータとの間の関係を研究することによって統計的治療計画システムを構築する予定である. 最後に,構築した統計的治療計画システムに患者の治療直前に得られる位置照合のためのEPID画像とcone-beam computed tomography (CBCT) 画像 (テスト症例) を入力し,テスト症例における統計変動に頑強な腫瘍領域,リスク臓器領域及び治療計画パラメータを出力させ,最適な治療計画を自動立案するプロスペクティブ適応放射線治療システムを開発する予定である. 本研究で得られた成果を社会・国民に対して発信を行うため,国内外の学術会議・シンポジウム等で発表する予定である.また研究成果を英語論文として纏め,海外の医学物理学・放射線腫瘍学関係の学術雑誌に投稿する予定である.
|
備考 |
計算機支援診断治療研究室ホームページ http://www.shs.kyushu-u.ac.jp/~arimura
|