研究課題/領域番号 |
15J03635
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川又 綾乃 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
キーワード | 抗腫瘍活性天然物の全合成 |
研究実績の概要 |
16員環マクロライドFD-891はアクチンとアクチン結合タンパク質間のタンパク質-タンパク質間相互作用 (PPI) の阻害活性と抗腫瘍活性を有する。このような興味深い活性を有するFD-891の一次結合タンパク質の決定と結合様式の解明を行うことを目的としている。具体的には一次結合タンパク質が、FD-891のどこに、どのような相互作用をしているのか解明するとともに、一次結合タンパク質がアクチンかアクチン結合タンパク質であるか決定する。さらにPPIの阻害活性と抗腫瘍活性に相関があるか調査する。本研究により新規の抗腫瘍活性発現機構の発見に貢献する。 またPPIは様々な病気やシグナル伝達に関わっていることが知られているため、本研究により、アクチンとアク チン結合タンパク質間のPPI研究を発展させ、さらに様々な疾病の新薬開発に貢献する。 今年度の実施計画ではFD-891およびFD-892の全合成を達成し、FD-891およびFD-892のマクロラクトン部と側鎖部を組み合わせた ハイブリッド型誘導体を合成する予定であった。実際に今年度でFD-891, FD-892の全合成は達成しており、FD-891のマクロラクトン部とFD-892の側鎖部を組み合わせたハイブリッド型誘導体を合成した。それにとどまらず、側鎖部の誘導体とFD-891のマクロラクトン部を組み合わせた新たな誘導体も合成し、側鎖部における構造活性相関研究を行った。その研究により、側鎖部の炭素鎖の長さが抗腫瘍活性に重要であることが明らかになった。これらの情報はFD-891の一次結合タンパク質の決定と結合様式解明のためのプローブの構造設計の基盤となる情報であるため、意義深いものと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際に今年度予定していたFD-891およびFD-892の合成は達成でき、さらに予定していた誘導体のみならず、新たに側鎖部の誘導体も合成できた。さらにこれらの内容はPacifichem2015やJ.Antibiotで公表し、化学会の発展に寄与できた。
|
今後の研究の推進方策 |
FD-891の一次結合タンパク質の決定と結合様式解明のためのプローブの構造設計の基盤となる情報を得られたため、今後はプローブの合成を行う。具体的には結合タンパク質同定に利用可能なアルキンを有した誘導体を合成する。また結合タンパク質のアミノ酸残基と共有結合生成能を有する誘導体、すなわちフォトアフィニティーラベリングに利用できるジアジリン基を有した誘導体を合成する。 次に、プローブの抗腫瘍活性評価および PPI阻害活性評価を筑波大学大学院生命環境科学研究科臼井准教授の指導の下、実施する。 これらの誘導体の活性評価の結果から、合成したプローブがタンパク質同定に利用できる程度の活性が維持されていると判明次第、タンパク質の釣り上げ実験を行う。それらの結果からFD-891と結合タンパク質との結合様式を解明する。
|